[不条理いつまで]
■「特別な規制はない」
米空軍兵による少女誘拐暴行事件の初公判があった12日夜。嘉手納基地へと続く沖縄市のゲート通りは、多くの米兵でにぎわっていた。この日、在沖米軍トップらが、基地外行動を規制する「リバティー制度」を強化するなど対策を講じていると発表した。しかし、兵士から返ってきたのは「特別な規制はない」という声だった。
ことし1月、沖縄に配属されたという米軍キャンプ・ハンセン所属の海兵隊の男性(19)は友人とゲート通りを訪れた。事件を知ったのは数日前。「最悪な事件。私たちは日本とその周辺諸国を守るためにいる」と険しい表情を見せた。最近、行動制限や外出規制があったか尋ねると「特別な規制はない」と淡々と話した。
少女が性犯罪の被害に遭い、県民から抗議の声が噴出した事件の裁判があった夜、基地の門前町を歩いた。
■事件知らない空軍兵も
12日午後11時半、沖縄市ゲート通り。青や緑のネオンで照らされた通りには、クラブやバーから大音量の洋楽が漏れていた。道路脇にはYナンバーの車両がずらりと並び、時折、重低音の音楽を響かせた車が通る。
地元客や観光客も見かけたが、多くは米軍関係者とみられる外国人。英語が飛び交い、歩道でビールやウイスキーのボトルを手に笑い合う。迷彩服を着て歩く人の姿も。
日付が変わった13日午前0時過ぎ、人出がますます多くなり、歩道は多くの人であふれかえった。巡回する県警のパトカーには目もくれず、酒に酔ってビルの階段で寝る男性もいた。
キャップをかぶり、陽気に振る舞う米軍嘉手納基地所属の空軍兵の20代男性は友人とバーで酒を飲みながら会話を楽しんでいた。
数日前に同僚から事件のことを聞き、驚きを隠せなかったという。事件の大きさだけでなく「同じ基地所属の空軍兵による犯行だというのも信じられない」と嘆いた。
別のバーで飲んでいた20代の空軍兵の男性2人組。事件を伝える英語のウェブ記事を見せると、1人は「なんてひどい事件なんだ。知らなかった」と驚いた。
もう1人は同僚から聞いたというが「同じ基地所属の部隊だが詳しくは知らない」という。事件後の外出規制などについて「制限はない」と素っ気なく話した。
よくゲート通りに遊びに来るという日本人の20代女性は「事件は知っている。けど、それから(この町は)なんも変わってないよ」と米兵たちの笑い声がする方を見ながらつぶやいた。
相次ぐ米兵の性犯罪に県民から綱紀粛正を求める声が上がった。12日、エマニュエル駐日米大使とロジャー・ターナー四軍調整官が連名で兵士の教育や監視を強化していると発表したが、基地の門前町の喧噪(けんそう)はいつも通りだった。(社会部・玉那覇長輝)
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