重い障害がある子と親を支えたい。

 いわゆる医療的ケア児が宿泊できる新施設が誕生しようとしています。

 子どもたちが安心して暮らすために動き出した人たちです。

 石狩市にある「重度心身障がい児デイサービス・あいキッズ」。

 ここでは人工呼吸器など、医療の支えが欠かせない重い障がいのある子どもたちが、日中のひとときを過ごしています。

 働きに出ている親の帰りを、安全に待つための大切な場所です。

 看護師の海谷由希さん40歳。

 自身も重い障害のある子どもを育てています。

 この施設は、海谷さんのような障がい児の母親が中心となって立ち上げたNPO法人「ソルウェイズ」が運営しています。

 「もともと疾患を持って生まれてきているというところもあるので、日常生活から違うんですよね。 マイペースででも着実に成長しているんですよね。 できなかったことができるようになったり表現しなかったことが表現するようになったり、それは表情だったり、動きだったり。 小さな変化でも成長しているんだなってすごい感じるから、それはここで働いていて、お母さんと共有できる、スタッフと成長したねってやれるのがすごいこの仕事のいいところというか醍醐味ですよね」(海谷由希さん)

 24時間医療の支えが必要な子ども、医療的ケア児。

 そうした子どもは全国的に増えていて、札幌市内だけで300人以上。

 背景には医学の進歩で多くの命を助けられるようになったことがあります。

 海谷さんたちが働くデイサービスでは、学校へのお迎えも行っています。

 海谷さんの一人娘、優奈さんです。

 1歳半でレット症候群と診断された優奈さん。

 レット症候群は、国内に1000人ほどしかいない難病で、食事や歩行など、それまでできていたことが徐々にできなくなるとされています。

 「寝がえりしていたのがしなくなって、ひとりで座れていたんですけど座れなくなって、おもちゃも握って遊んでいたけど握れなくなったんですよね。 表情もなくなって自閉傾向になって。 これはおかしいっていって(受診した)。 じゃあ心配しすぎなのかとかね。 私のせいかなとかね、思ったけど。 その時が一番つらかったかもしれないですね、一番しんどかった。」(海谷由希さん)

 転機が訪れたのは7年前。

 この施設の立ち上げと同時に勤め始め、悩みを共有できる仲間にも出会えました。

 「今は相談できる人もいるし力になってくれる人がいるから、なんとかなるさって思えるよね、そう思えるのは周りのおかげだね。 ありがたいね」(海谷由希さん)

 海谷さんたちのデイサービスを運営しているNPO法人ソルウェイズ。

 2025年4月に新たな施設の開業を予定しています。

 これまでの日中に加え、夜の預かり=ショートステイができる施設です。

 子どもたちは普段から顔を合わせているスタッフと安全に夜を越すことができます。

 1階には障害のあるなしに関わらず利用できる小児科も備えています。

 ショートステイの開設を前に、夜の預かりの体験会が行われました。

 優奈さんも家を離れてお泊りです。

 今回は母親の海谷さんもスタッフとして見守ります。

 お友達が好きな音楽をいっしょに聞いたり。

 お互いが好きなものを当てるビンゴゲームに挑戦したり。

 友達と一緒の特別な夜はにぎやかに更けていきます。

 「一緒にお泊りできたね、嬉しいよね。 こうやっていると会話しているわけじゃないんですけどたぶんお互いに通じあってて、多分声を聴いてたり声を出していたり本人たちなりにコミュニケーションを取ってるんだろうなって表情でわかるから。 親と一緒にいるだけの姿ともまた違う姿をね、見てますね、今ね。 言葉だけじゃないよね」(海谷由希さん)

 こうした体験を通じて将来、地域の中で暮らしていければと願っています。

 無事に朝を迎えることができました。

 障がいのある子が自宅を離れて過ごす時間は、普段医療的なケアを担っている親にとっても大切な時間です。

 「長い介護生活心身ともにすごく緊張する場面が多いと思うので心のリラックスは何物にもかえがたいと思います」(NPO法人ソルウェイズ 運上 佳江 代表理事)

 宿泊もできる新しい施設の開業は2025年4月。

 一緒なら、安心。

 一緒なら、きっと笑顔。

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