モンチッチを手にするセキグチの関口晃市会長

 東京都葛飾区生まれのキャラクター「モンチッチ」が今年、誕生から50周年を迎えた。愛らしい姿が発売直後から人気を集め、30カ国以上で7000万個以上を売り上げている。生みの親である地元玩具メーカー会長が歩みを振り返った。【小林遥】

 つぶらな瞳にふわふわの毛。おしゃぶりをくわえる姿が特徴的なモンチッチ。「長く愛されているのはファンの皆さんのおかげ」と語るのは、モンチッチを手がける「セキグチ」(葛飾区西新小岩5)の関口晃市会長(88)だ。

 セキグチは1918年、人形の製造販売会社として創業。当初は自社商品ではなく、バイヤーからの依頼品を製造していた。

JR新小岩駅北口の広場にあるモンチッチの銅像

 関口さんは創業者の孫で、商品企画に携わっていた。60年に初めて渡米した際、世界を相手にオリジナルの人形を作ろうと思い立った。ただ、好まれる表情や服装、肌の色が国によってさまざまで、世界一の市場である米国に売り込める人形は生み出せなかった。

 悩んでいた時に関口さんはふと、「動物の愛らしさは世界共通ではないか」と感じた。「動物をモチーフにするなら人形ではなく、ふわふわの毛に包まれたぬいぐるみにしよう」とも思い、ぬいぐるみ作りに挑戦した。

 金型に材料を流し込んで作る人形と違い、ぬいぐるみは手作業が多い。特に目はデザインが表情を大きく左右するため、制作が難しかった。そこで顔と手足は本業の人形の技術を使い、胴体だけをぬいぐるみの素材で仕上げた。こうしてモンチッチが誕生し、1974年に店頭に並んだ。

 実はモンチッチを売り出した当時、羊やうさぎのぬいぐるみも同時に発売したが、ヒットしたのはモンチッチだけだった。関口さんは取引のあったオーストリアのバイヤーに同国での販売を勧め、欧米でも人気が出た。

モンチッチのモニュメントがある「モンチッチ公園」=いずれも葛飾区で

 モンチッチの名前の由来はフランス語。「私の」という意味の「モン」、小さくてかわいいという意味の「プチ」を組み合わせた。関口さんは「モンプティット」を提案したが、社内の話し合いで「モンチッチ」になったという。

 モンチッチが幅広く受け入れられた背景には、詳しいプロフィルや設定があえて設けられていないことがある。見た目はサルのようだが、明確に決まりはない。「家族や友人、恋人など、どんな存在にもなれるようにという思いを込めた」と関口さん。「モンチッチを手にした人は、特別な感情を抱く。その人がモンチッチの性格まで作り出す」と語る。

 人気キャラクターを地域振興につなげようと、近年は地元の葛飾区が力を入れている。

 2016年には、同社近くの工場跡地にモンチッチ公園を整備した。モンチッチなど同社の歴代の人形の像が飾ってある。翌17年にはキャラクターをあしらったマンホールをJR新小岩駅周辺に設置したり、ラッピングバスを走らせたりした。新小岩駅前には時計塔や銅像も建った。

 発売から50年が過ぎても人気は衰えない。関口さんは「子どもと親だけでなく祖父母を含めた3世代がかわいがってくれる」と語る。モンチッチのタグには「A Gift from Angel」(天使からの贈り物)と書いてある。「これからも、手にした人なりの関係をモンチッチと築いてもらいたい」と話した。

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