“難攻不落の天下の名城”といわれる松山城が建つ山で12日午前4時前、土砂崩れが発生した。
山の斜面が幅約50メートルにわたって崩れ落ち、土砂が麓のマンションや住宅が立ち並ぶ地域に流れ込んだ。

松山城の建つ山で土砂崩れが発生

愛媛・松山市の中心部の小高い山の頂に天守がそびえる松山城。

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城が建つ山の斜面がえぐれるように崩れ落ち、流れ出た大量の土砂で古い住宅がつぶされるなど、麓の住宅街に流れ込んでいた。

流された木が押しつぶした住宅にからみつき、道路やマンションのベランダにも散乱している。

土砂崩れ発生直後の映像

土砂崩れ発生直後の午前3時50分ごろに撮影された映像では、樹木が密集する山の斜面が崩れ、茶色い山肌が露出していた。
土砂がマンションの立体駐車場を押しつぶし、車が下敷きとなっていた。

撮影者:
あっ、家が崩れとる。やばいよもう、崩れとるもん家が。 

土砂は、住宅が密集する城下町を襲った。

土砂崩れでつぶれた住宅に住む3人が行方不明

12日午前4時前、愛媛・松山市の松山城が建つ標高133メートルの勝山(かつやま)で土砂崩れが発生した。山の斜面が幅約50メートルにわたって崩れ落ち、土砂が麓のマンションや住宅が立ち並ぶ地域に流れ込んだ。

崩れた勢いで、山の斜面から飛んだのか、マンションの高層階のベランダに樹木が引っかかっていた。

巻き込まれた住宅のそばで消防が捜索活動を行っているが、この住宅に住む90代男性と80代女性の夫婦と40代の息子とみられる3人の行方がわかっていない。

土砂崩れがあった斜面から100メートルほど離れた場所のベランダから撮影をさせてもらったが、目の前にも土砂が到達した痕跡が今も残されている。
アスファルトが茶色に変わっていた。

近隣住民は異様な音を聞いていた

深夜に土砂が崩れる直前、住民は木がちぎれる異様な音を聞いていた。

目撃者:
すごいピキピキ木がちぎられるような音と、あとはもう砂が落ちてくる、ズゴーッていう音。 

松山市の市街地の中心部、小高い山に建つ松山城。

城の歴史にくわしい名古屋市立大学・千田嘉博教授は、「山の上と麓の館のところまで石垣でつないでいるという、全国でも大変珍しい、非常に堅固な城」と解説する。

城を守る山肌は、なぜ崩れてしまったのだろうか。

平年の7月1カ月分の雨の8割以上が一気に

近隣住民は「ここ最近、ヤバかったです。雷とか」、「きのうの雨だけではなくて、そのもう1日前の夜中の雨ですね。それが豪雨があって、そのところに、きのう降ったから追い打ちをかけるというかですね」と語った。

土砂崩れ直前には松山市内は激しい雨が降っていた

土砂崩れが起きる直前の午前3時半ごろの松山市内の映像には、音を立てて地面を打つ激しい雨と夜空に走る稲光が映っていた。

松山市内では、10日夜から12日午前3時までに182.5mmの雨が降った。
平年の7月の1カ月間に降る雨の8割以上が一度に降ったことになる。

集中的に降った梅雨の雨。

地盤工学の専門家 愛媛大学大学院・岡村未対教授は「水分を含むば含むほど(土は)重たくなり、土が持っている自体の強度は下がってきてしまうので、雨が降って水をたくさん含んだ状態になってくると、土砂崩れを起こしやすいと。土の一般的な特徴」と説明する。

城の一帯は土砂災害の「特別警戒区域」に指定

松山城では、2010年の大雨でも土砂崩れが発生し、夏目漱石の下宿先を復元した「愚陀仏庵」が全壊するなどの被害が出ていた。

城の周りは急な傾斜地のため土砂災害の「特別警戒区域」に指定されていた

城を取り囲む一帯は急な傾斜地になっているため、土砂災害の「特別警戒区域」に指定されていた。

近隣住民:
もともとちょっと土砂災害危ない地域だっていうのは知ってたんで、ついに来たかっていう。

去年の大雨で崩れた防護壁の工事を予定

さらに今回の土砂崩れでは、松山城で行われていたある工事との関係性が注目されている。

2023年7月の大雨で傾いた防護壁の工事が予定されていた

崩れた山の頂上付近を見ると、ブルーシートが敷かれていて、その周辺から斜面を削るように土砂が崩れ落ちたことがわかる。

松山城では、2023年7月の大雨の影響で、天守の東側にある緊急車両用の道路で路肩の防護壁が傾く被害が発生。7月1日から元の壁を撤去し、新しく作り直す工事を予定していて、そのため現場が雨で崩れないよう、ブルーシートがかけられていた。

一方、専門家は、日本の雨の降り方が大きく変化したことで、全国の城が危機にさらされていると指摘している。

近年の雨の降り方の変化で城も自然の脅威にさらされているという

城の歴史にくわしい名古屋市立大学・千田嘉博教授:
近年雨の降り方が大変変わってしまったことによって、お城の斜面などが崩れてしまうということが全国で相次いでいまして、やはり気候の変化で、城も自然の脅威にさらされてきている。

現場では、今も安否が分からない3人の捜索が続けられている。
(「イット!」7月12日放送より)

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