愛媛県松山市で土砂災害が12日に起きた松山城の「城山」では、2010年にも同様の土砂崩れが発生するなど、「城山」の周囲は土砂災害警戒区域にも指定されています。今回の土砂災害はなぜ起こったのか、原因の可能性を専門家に聞きました。
土砂崩れの現場には姿を見せていたのは、愛媛大学で地震工学や土砂災害を研究する森伸一郎特定教授。今回の土砂崩れの原因のひとつを連日の大雨が引き金になったと推測します。
森伸一郎特定教授:
「きのうの雨だけでなくてもう1日前の夜中の雨ですね。松山城の北側の斜面から1カ所ではずっと夕方までものすごい水が出ていた。谷地形の所に水がたまりますから、そのところにきのう(11日)降ったから追い打ちをかける」
土砂災害が起きたのは松山市の中心にある松山城の「城山」の北側にある斜面。ロープウェイ街と平和通に近い場所です。
地質学が専門の愛媛大学の高橋治郎名誉教授は、今回の土砂崩れについて「表層崩壊」の可能性を指摘します。
高橋治郎名誉教授:
「今回の緑町は地層が山の中に突っ込んだ形で入りこんでますから、本来丈夫なんですけど表層はどうしても風化して崩れる」
「表層崩壊」は斜面の表面が風化して柔らかくなった土壌に大雨が降ることで重くなり、雨が浸み込まない固い岩盤の上を表面の土だけが滑る現象です。
高橋治郎名誉教授:
「表層の崩壊ですから、それほど大きな土砂が流れ下ったわけではないが表層部、ちょうど木が根っこを張って水をしっかりためたような所が重たくなって、下に崩れ落ちる」
「城山」の南側では2010年7月、大雨の影響で斜面が広い範囲にわたって崩れ、観光スポットにもなっていた漱石や子規ゆかりの「愚陀佛庵」が倒壊しました。
高橋治郎名誉教授:
「自然の摂理で風雨にさらされて風化すると崩れざるをえない。山は高いけれど低くなっていくのと同じ。南側の愚陀佛庵が土砂崩れで壊れてしまいましたけれど、それと同じ地質・砂岩・泥岩でなるところ」
松山市では雨の降り始めた10日からの雨量が213ミリ。これは7月の平年の1カ月分に相当する雨が約2日で降ったことになります。
現場一帯は土砂災害警戒区域などに指定されていて、森教授は警戒を呼びかけています。
森伸一郎特定教授:
「土砂災害危険区域の看板がそこらじゅうに設置してある。区域内は少なくとも注意。泥水がでてきたらそのうち滑るという山からのメッセージ」
この一方、今回の災害では松山城で行われていた工事との関係性が注目されています。
松山市によりますと松山城は、去年7月の大雨の影響で天守の東側にある緊急車両道路の路肩の擁壁が傾いていたということです。このため7月1日から元の擁壁を撤去し、新しい壁を作り直す工事が予定されていて、現場が雨で崩れないようブルーシートをかけていました。新しい補強壁を作るための土や砕石は現場に置いていなかったということです。
松山市は工事現場が土砂崩れの起点となったのか、山の中腹付近から崩れたのかは不明とし、工事との因果関係を調査する予定です。
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