2024年7月 大分地裁の裁判員裁判で初の死刑判決が

2020年に大分県宇佐市で起きた強盗殺人事件の裁判員裁判で、大分地裁は7月2日、無罪を主張していた被告の男に対し、死刑を言い渡した。
大分地裁での死刑判決は1980年以来で、2009年から始まった裁判員裁判では初めてのことである。
裁判官とともに判決を決めた、一般の人から選ばれる裁判員が記者会見を行い、死刑という判決に至った胸の内を話した。

事件は2020年2月に発生 約1年8か月後に佐藤被告を逮捕

判決が注目された今回の裁判。この事件は2020年2月、大分県宇佐市安心院町の住宅で住人の山名高子さん(農業・79)と長男の博之さん(郵便配達員・51)が遺体で見つかったものである。
事件が動いたのは約1年8か月後。警察が逮捕したのが佐藤翔一被告だった。佐藤被告はその後、強盗殺人の罪などで起訴された。

宇佐市の事件現場(2020年)
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異例の長さとなる2年以上の公判前整理手続きを経て、2024年5月から大分地裁で裁判員裁判が始まった。

被告は初公判から結審まで一貫して無罪を主張

初公判で佐藤被告は「事件当日、ユーチューバーを名乗るプロレスマスクの男たちと合流し、事件に巻き込まれた」などと一貫して無罪を主張。
起訴内容を全面的に否認し、弁護人も無罪を訴え、検察側と主張が真っ向から対立した。

法廷内スケッチ(初公判の様子)

また6月12日の裁判で被告の男は「本当の犯人を目の前にしていない事が不幸で残酷な事実だと思っている」と述べ、改めて無実を訴えた。

そして、6月17日検察側は「ストーリー自体が荒唐無稽。残虐で極めて強固な殺意に基づく犯行」などとして大分地裁の裁判員裁判としては初めて死刑を求刑。
一方、弁護側は「犯人であることの決定的な事実はない」などと改めて訴え、裁判は結審した。

大分地裁「被告が犯人であると優に認められる」「不合理な弁解」

7月2日に開かれた判決公判。裁判長は冒頭、結論にあたる主文を後回しにして、判決理由の読み上げから始めた。

この中では「被告が犯人であると優に認められる」「不合理な弁解を続け、反省の態度を示していない」などと指摘。

そして…

「主文、被告人を死刑に処する」
検察の求刑通り、佐藤被告に対し、死刑を言い渡した。

判決公判(7月2日)

大分地裁で死刑判決が言い渡されるのは1980年以来44年ぶりとなる。
裁判官とともに判決を決めた、一般の人から選ばれる裁判員が記者会見を行い、死刑という判決に至った胸の内を話した。

裁判員「チームとして頑張ってきて結論を出した」

Q:判決をどう感じているか
◆裁判員の男性
「いろいろ悩んだ結果出た判決だがこれは妥当かなと思う」
◆別の裁判員の男性
「重い判決だったと思う。私たちは何日も何日も話し合ってきて、チームとして頑張ってきて結論を出した。私たちも納得して判決が出たと確信している」

裁判員「たぶん嘘だろうと思い、こういう判決に至った」

Q:裁判の中でどこに悩んだか
◆裁判員の男性
「私たちは素人なので、裁判官の皆さんと話し合った。被告人が本当のことを言っているのか、嘘を言っているのか分からなかったが、たぶん嘘だろうと思い、こういう判決に至った」
「検察側は詳しく説明してくれて確かにそうだなと思った。弁護側の意見を聞いた時も、被告人は犯人じゃないのかなと思う時もあったが、最終的には検察側の意見だとみんなで判断した」

◆別の裁判員の男性
「死刑というその重大さに悩んだ。これはもう、裁判員全員悩んだと思う。チームとして決めていくということで心が和んだ。1人で決めるとどうしても負担が大きくなる。チームだったのでここまで来たと思う。偏ることは控えたいというのは、みんな意見があったので、そこで頑張ってここまで乗り切ったと思う」

裁判員の会見(7月2日)

弁護側は判決を不服として福岡高裁に2日付けで控訴した。

「判決については想定していた中でも最悪の判決だと理解している。控訴審では逆転無罪を勝ち取るため活動していきたい」と弁護側はコメントしている。

7月2日判決公判 傍聴券の抽選に長蛇の列

(テレビ大分)

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