写真はイメージ=ゲッティ

 インターネットバンキング口座からの不正送金のために、他人のIDなどを使って大手銀行のサーバーに不正にアクセスしたとして、警察庁サイバー特別捜査部などは9日、無職の矢野洋平容疑者(44)を不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕した。

 警察庁は、矢野容疑者がネットバンキングの不正送金グループの指示役だったとみている。SNS(ネット交流サービス)での募集を見て加わるなどした9人がこれまでに警視庁や茨城県警などに逮捕されており、「匿名・流動型犯罪グループ」の可能性があるという。

 また、全国の事件を直接捜査する警察庁のサイバー捜査部門が2022年4月にできて以降、国内で容疑者を摘発したのは初めて。

 逮捕容疑は23年1月29日、栃木県下野市の男性会社員(24)と共謀し、大手銀行のサーバーに神奈川県の60代男性のIDとパスワードを使って不正にアクセスしたとしている。警察庁は認否を明らかにしていない。

 警察庁は、矢野容疑者らによる不正送金は22年夏~23年春に20件以上あり、被害額は計1億2000万円に上るとみている。

 警察庁によると、矢野容疑者らは役割分担しながら、偽造した運転免許証を使ってSIMカードを再発行させて他人の携帯電話を乗っ取る「SIMスワップ」の手口で不正送金をしていたとみられる。

 不正送金グループの指示役が逮捕されるのは極めて異例。個別に捜査していた警視庁や広島県警など16都道府県警が合同捜査本部を設置し、警察庁サイバー特別捜査部も暗号資産に換金された被害金を追跡するなどしたところ、矢野容疑者が指示役として関与していた疑いが判明した。

 捜査にあたった警察庁サイバー特別捜査部の田尾啓一郎・特別捜査課長は「高度で専門的な技術で容疑者の特定に貢献できた。都道府県警と連携し、サイバー特別捜査部として持ち味を生かすことができた画期的な事件だ」と述べた。【山崎征克】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。