公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 企業向け保険契約でカルテルを結んだとして、公正取引委員会は、損害保険大手4社の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、行政処分を科す方針を固めた。対象となる東京海上日動火災保険▽損害保険ジャパン▽三井住友海上火災保険▽あいおいニッセイ同和損害保険――に対し、すでに通知した。関係者への取材で判明した。

 関係者によると、4社は、複数の会社が相乗りすることで災害時などの保険金支払いリスクを分散する「共同保険」の仕組みを悪用。見積もり合わせなどの際に、保険料が高止まりするように調整したり、契約を仕切る「幹事社」の地位を維持できるようにしたりするなど、「相互不可侵」を申し合わせていた。

 企業向け保険では4社が約9割のシェアを占めており、こうした背景から各社の利害が一致し、不正が横行していた疑いがある。

 公取委は昨年8月、私鉄大手・東急グループと、仙台空港の運営会社・仙台国際空港向けの保険契約を巡り、4社が事前に協議し価格を不適切に引き上げた疑いがあるとして任意の調査を開始。同年12月には東京都やコスモエネルギーホールディングス、コスモ石油などとの保険契約にも調査の範囲を広げ、立ち入り検査を行った。

 関係者によると、公取委は今回、東急と仙台空港の事件を先行して処分するとみられる。東急の事件では4社が、仙台空港ではあいおいを除く3社が、2022年に火災などの損害保険でカルテルを結んだとされる。ただし、東急との契約については東急側が疑いを抱いたことで入札がやり直され、不正行為による売り上げがなく、仙台空港との契約も課徴金算定額が基準に達しなかったという。

 このため公取委は、課徴金の納付は命じず、再発防止を求める排除措置命令にとどめる見込み。一方で、調査中の残りの事件ではカルテルによる売り上げが成立している契約もあり、課徴金納付命令に発展する可能性も残る。

 4社は昨年12月、金融庁から保険業法に基づく業務改善命令を受けた。計576の民間企業と自治体向けの保険契約で不適切な行為があったとされ、4社は今年2月、業務改善計画書を同庁に提出した。【渡辺暢】

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