オウム真理教により住宅街に猛毒の「サリン」がまかれ8人が死亡した松本サリン事件から27日で30年です。教団と長く向き合ってきた弁護士がいます。松本支部道場を巡る訴訟で原告代理人を務めた山内道生弁護士です。30年たった今の社会は若者が教団に救いを求めた当時の状況と似ていると、警鐘を鳴らしています。

山内道生弁護士:
「心の中では30年たったとは思えないんですよ。こんなに怖い教団を相手に、何年もやってたかと思うと、今でも戦慄を覚えます」

松本市の山内道生弁護士。長くオウム真理教や事件の被害者と向き合ってきました。

全ての始まりはオウム真理教松本支部道場を巡る訴訟。1992年、土地の明け渡しを求めて提訴した住民の代理人を務めました。

松本サリン事件が発生したのは、その判決の目前。裁判を妨害しようと裁判官の官舎を狙った犯行だったことが後に明らかになりました。

山内道生弁護士(当時):
「判決の結果に相当、危機感を持った上で、裁判官官舎を狙ったんだろうと言い切れる」

その後、山内弁護士は被害者弁護団の一員としても活動しました。

30年がたった今、怒りと恐怖が入り交じり、より複雑な心境だと言います。

山内道生弁護士:
「日本の裁判史上、犯罪史上、前代未聞、空前絶後。こんな犯罪者集団はいません。後にも先にもいないことを祈りたいですけど…わからないんですよ、カルトだから。もう一度カルトということを勉強してもらいたい」

事件を知らない世代が増える中、山内弁護士が懸念しているのは「風化」です。

“修行すれば救済される”…若者を吸収し、教団が拡大していった90年代前半と現在には共通する閉塞感があるとし、事件の背景を改めて考える必要があると訴えます。

山内道生弁護士:
「(オウム真理教に)若者が何で入ったのかというと、やはり、生きづらい社会。こういう教団は、いつでも出ないとも限らない。今の社会的に、風潮も似ています。今が本当に生きづらいな、というふうに考えているのは、非正規労働者がいて、若い女性が、自殺者がものすごく多い。みんな困ってるんですよ。そこに、カルト、オカルト現象の芽がいつもあるんです。(教団に)本当に優秀な若者がなぜ入っていったのかということは、これを解明することが今、われわれの本当の責任、課題だろうと思うんです」

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