能登半島地震の直後、ビニールハウスで過ごす被災者=石川県輪島市で2024年1月2日、長谷川直亮撮影

 1月の能登半島地震で、石川県が輪島市など被害が集中した5市町で訪問調査をしたところ、3月末時点では壊れた自宅で生活する高齢者ら支援を要する在宅の被災者が5483人いた。県への取材で判明した。大地震で在宅の被災者の大規模な状況が明らかになるのは初めて。

 当時、県内の避難所に避難していた被災者の7割に当たる規模だった。全壊した家屋で暮らしていた人もいて、5市町は生活再建のための訪問支援の拠点を新設したり拡充したりした。県も6月まで、実態調査を続けている。

 避難所に比べてケアが手薄になりがちな在宅避難は、災害関連死の要因と指摘されている。こうした状況もあり、県は国の「被災高齢者等把握事業」を活用して、5市町で住宅の損壊程度にかかわらず、買い物などの支援が必要なのに避難所には身を寄せていない高齢者や障害者らの自宅を訪問して調べることにした。

 この事業は、2018年の西日本豪雨から水害で浸水した家屋に住み続けた被災者を把握するために活用されている。ただ、地震では在宅被災者の大規模な状況は調査されたことがなかった。

 県の調査は2~3月に珠洲(すず)市では全戸訪問で未確認だった約4000人を、輪島市と七尾市、能登町、穴水町の4市町では高齢者や障害者の名簿に基づき計4048人を対象に実施した。

 在宅の被災者を巡っては、熊本地震(16年)で17年末までに災害関連死と認定された197人のうち、死亡前に自宅で生活していたのは78人と4割を占めた。

 東日本大震災(11年)では宮城県石巻市が震災4~5年後に調査したところ、133世帯が半壊以上で補修しきれないまま自宅に住んでいた実態が浮かんだ。復興から取り残された在宅の被災者として、支援策が課題となった。

 被災者の生活再建に詳しい菅野拓・大阪公立大大学院准教授は「今後は訪問を重ねて、被災者一人一人にあった生活再建の支援をする『災害ケースマネジメント』の実施につなげていくことが重要だ。災害前から、在宅の被災者の調査や支援策を地域防災計画などに盛り込んでおくことも求められる」と話す。【井上元宏、深尾昭寛、中尾卓英】

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