勤務地によって給料が減額されるのは憲法違反だとして、津地裁民事部の竹内浩史総括判事(61)が国を提訴すると表明し、注目を集めている。現役判事が国を訴えるのは異例だ。裁判官の給料の仕組みは一体どうなっているのだろうか。【渋谷雅也】
竹内判事は弁護士を16年間務めた後、2003年に弁護士任官制度で判事に任命された。大阪高裁、名古屋高裁などを経て21年4月に津地裁に赴任した。
訴訟では、大阪高裁にいた時期と比べて給料が下がったと主張し、国を相手に直近3年間の減額分約240万円の支給や国家賠償を求める。7月上旬に名古屋地裁への提訴を予定している。
判事の報酬について憲法80条2項は「下級裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中、これを減額することができない」と明記している。
竹内判事は取材に「憲法で裁判官の報酬は保証されている。裁判所法で裁判官は転勤拒否も認められているが、(その権利を)放棄して異動しているのにも関わらず、給料が減らされるのは不合理だ。待遇面などで裁判官を辞めていく人も増えている」と訴えた。
「報酬が保証されている」にも関わらず、なぜ給料が減るのか――。これは国家公務員の給料に物価の差を勘案して地域ごとに支給される「地域手当」があるからだ。人事院によると、地域手当は民間企業の賃金水準を基準として物価等を考慮し、基本給などの月額に7級地(地域区分)ごとの支給割合を掛けて算出される。
割合が最も高いのは東京23区の20%。これに大阪市、豊田市など21自治体が16%、さいたま市や名古屋市などの24自治体が15%で続く。津市はというと亀山市や桑名市と同じ6%。これは7級地のうち2番目に低い割合だという。
割合が低かったり、地域手当のない地域に異動した場合は、緩和措置として異動した1年目は前任地の割合が適用される。だが、2年目は前任地の8割に目減りし、3年目からは異動先の割合が支給される。地域手当の7級地などは10年ごとに見直され、今年実施される。
「見直しの年でもあるから、このまま被害を受けているだけでは理不尽で黙っていられない」。竹内判事はこう訴える。
最高裁広報課は「コメントは差し控える」としている。
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