去年1月、福岡市のJR博多駅近くで元交際相手の女性を殺害した罪などに問われている男の裁判で、検察は懲役30年を求刑しました。
丸刈りに濃紺のジャージを羽織って法廷に現れた寺内進被告(32)。
殺人やストーカー規制法違反などの罪に問われている寺内被告の裁判員裁判は、24日で5日目を迎えました。
裁判の冒頭、今回の事件の被害者で元交際相手の川野美樹さん(当時38)の母親の手紙が読み上げられました。
<川野さんの母親の手紙>
『被告に対しては死刑にしてほしいと思います。死刑にしても娘が戻ってくるわけではないですが、極刑を望みます。法廷でこうして思いを伝えると、被告が逆恨みするのではないかと不安です。被告が反省できるとは思わないです。できるだけ長く刑務所へ入れてください』
手紙の内容を聞きながら、寺内被告は常に斜め下を向いていました。
17日から始まった今回の裁判員裁判。
起訴状によりますと、寺内被告は去年1月、JR博多駅近くの路上で、つきまとい行為が禁止されていた川野さんを待ち伏せした上で、包丁で何度も刺し殺害したとされています。
2人の関係に変化があったのは、交際から半年が経った2022年10月。
川野さんが警察に「別れようと言っても聞かない」などと相談し、警察は寺内被告につきまといなどを禁じる警告を行いましたが、その後も寺内被告は川野さんの勤務先に押しかけるなどし、警察はおととし11月にストーカー規制法に基づく禁止命令を出していました。
しかし、寺内被告は事件当日、川野さんの勤務先近くで待ち伏せし、犯行に及んだとされています。
<17日の裁判>
◆寺内被告
「刺したことは間違いないですが、待ち伏せしたことは違います」
初公判で、殺人罪については認めた一方で、ストーカー規制法違反について無罪を主張した寺内被告。
事件当日、川野さんの勤務先がある博多駅付近を訪れた理由についてはー。
◆寺内被告
「博多駅に携帯電話の代金を支払いに行った。川野さんの勤務先近くに立ち止まったのは、今後の生活を考えていたから」
川野さんと出会ったことはあくまで偶然だと主張しました。
<18日の裁判>
◆弁護側
「川野さんに気付いて何か思った?」
◆寺内被告
「『なにしてんの』という感情」
◆弁護側
「声をかけて相手はどんなリアクションを?」
◆寺内被告
「『おお』みたいな感じちゃいますか」
◆弁護側
「犯行現場前で立ち止まり会話した?」
◆寺内被告
「あんまり覚えてないですけど、言い合いになった」
◆弁護側
「包丁を手に取ったことは覚えている?」
◆寺内被告
「多少覚えています」
◆弁護側
「どうして手に取った?」
◆寺内被告
「気づいたら倒れていたんで」
ストーカー規制法違反について無罪を主張、あくまで偶発的な犯行だと主張する寺内被告に対し、検察は24日、有期刑の上限となる懲役30年を求刑しました。
◆検察
「川野さんの会社近くに立ち止まる行為は、ストーカーが成立する」
「強固な殺意に基づく残忍極まりないもので、悪質性が極めて高い」
一方、弁護側は「ストーカー規制法違反に当たらない」とし、懲役17年が妥当と主張。
証言台に立った寺内被告は、最後の意見陳述を行いました。
◆寺内被告
「ご遺族の方、この度は大切な人の命を奪ってしまい申し訳ございません。毎日毎日後悔しております。幸せな家族の時間を奪ってしまい申し訳ありません。全てにおいて僕が悪いと思っています」
◆裁判長
「それで大丈夫ですか?」
◆寺内被告
「ほんまに待ち伏せなどしておりません」
最後まで待ち伏せを否定した寺内被告。
判決は6月28日に言い渡されます。
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