「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、不審な死をとげた和歌山県田辺市の資産家の男性。

男性が残した13億円以上とされる遺産をめぐる裁判で、21日、判決が言い渡されました。

巨額の遺産の行方は、一体。


■「紀州のドン・ファン」の“遺言書”をめぐる裁判で親族側の訴えが退けられる

和歌山地方裁判所で言い渡されたのは、「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さん(当時77)が残した「全財産を田辺市にキフする」という内容の“遺言書”をめぐる判決。

【高橋綾子裁判長】「原告らの請求をいずれも棄却する」

野崎さんの遺言書ではないとしていた、親族側の訴えが棄却されました。

遺言書は有効であると主張してきた田辺市は…。

【田辺市総務部契約課 宮野恭輔さん】「改めてほっとしているというのが、率直な感想でございます」


■注目されていた資産家・野崎幸助さんの13億円超の遺産の行方

和歌山県・田辺市の資産家・野崎幸助さん(77)。

金融業などを営み、総資産は50億円ともいわれ、「紀州のドン・ファン」と呼ばれていました。

【野崎幸助さん(2016年2月)】「1億円ぐらいは、紙切れみたいなもんや、私にとっては」

2018年2月には55歳年下の須藤早貴被告(28)と結婚しましたが、その3カ月後、急性覚せい剤中毒で死亡。


(Q.悲痛な心境だと思いますが?)
【須藤早貴被告】「・・・・」
(Q.今の心境を一言だけ)
【須藤早貴被告】「・・・・」

事件から3年後、須藤被告は逮捕され、殺人などの罪で起訴されました。しかし、いまだに殺人の罪についての裁判が始まる見通しはたっていません。


一方で、野崎さんをめぐっては、もう1つ注目されていたことがあります。

それは…13億円超の遺産の行方です。

野崎さんが残した遺産は、預貯金や有価証券などで、合わせて13億円以上とされ、他にも不動産や車などがあります。

法律に基づくと、妻であった須藤被告がその4分の3を、兄弟がその4分の1を受け取ることになるはずでした。


しかし、そこへあらわれたのが…。

「個人の全財産を田辺市にキフする」

メモ書きのようにも見える紙。

野崎さんが須藤被告と出会うよりも前に、書かれたとされる遺言書です。

もし、この遺言書が有効であれば、遺産はすべて田辺市のものに。


そんな中で4年前、野崎さんの兄など親族4人が、遺言書は無効だとして訴えを起こしたのです。

【親族の代理人弁護士(2020年6月)】「(遺言が)野崎幸助さんの遺志に基づいて書かれたものだとは、考えておりませんし、偽造された可能性が高いものだと考えております」


原告側の弁護士によると、親族側が「遺言書が偽造された」とした根拠の1つが、「筆跡」。

遺言書の「野崎」の「崎」について、野崎さんが生前に書いた5つの『崎』と比較すると、形状や書き方が大きく異なり、これを同筆とみなすのは困難と指摘しました。

一方、田辺市側も、生前に野崎さんが送ったとされる督促状の署名と、遺言書の署名が非常に似ているとして、遺言書が本物であると主張し、訴えの棄却を求めてきました。

また、野崎さんが遺言書を残した動機についても、親族側が「合理的な理由がない」とした一方で、田辺市側は、野崎さんが生前、田辺市に寄付を行っていたことから、「寄付の意思はあった」と主張していました。

■「遺言書は野崎さんによるもの」判決を受け田辺市「ほっとしている」

そしてむかえた、21日の判決で裁判長は…。

【高橋綾子裁判長】「原告らの請求をいずれも棄却する」

判決によると、原告側が提出した筆跡鑑定には、野崎さんが作成した書面であることが明らかではないものが含まれていて、遺言書に見られる流れるような筆跡は、野崎さん本人によると推認し得るとしました。

また、野崎さんは生前、地元・田辺市の発展を望む発言をしていたり、周囲に「きょうだいとの関係が良くなく、財産を譲りたくない」と話したりしていたことなどから、遺言書は野崎さんによるものと見るほかないとしました。


この判決を受け、田辺市はさきほど会見を開きました。

【田辺市総務部契約課 宮野恭輔さん】「職員はみんな遺言書が有効であると信じて、事務を進めてました。ほっとしているというのが、率直な感想です」

【田辺市総務部 西貴弘部長】「市民の方に返すことができるような、行政活動に使っていくことになると思う」

田辺市は遺産を財政調整基金などに積み立てる方針で、具体的な使用方法については、今後決めていくとしています。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月21日放送)

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