自宅工房でガラスの風鈴を作る関根久雄さん=静岡県三島市大社町で2024年6月19日午後2時40分、石川宏撮影
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 夏本番を前に、静岡県三島市のガラス職人、関根久雄さん(59)が、三嶋大社周辺で「みしま風鈴」の引き売りを始めた。風が吹くたび、リヤカー屋台に下げた約30個の風鈴が涼やかに鳴る。音に誘われた観光客らが屋台を取り囲み、品定めに風鈴を揺らすと、再び辺りに「チリン、チリリン」。涼風を呼ぶような音が響く。

 みしま風鈴は、関根さんが経営する同市大社町の「日光陶器店」のオリジナル。関根さん自身が、3階の工房で製作している。「伊豆の情景が浮かぶ音にしたい」と、狩野川の砂鉄や富士山の火山灰、天城山の黒曜石など地元の鉱物をガラスに混ぜる。形やガラスの厚さ、気泡の有無など1点1点異なり、音も微妙に違う。

 店頭で年中販売しているが、30年前から夏の間は麦わら帽子、半纏(はんてん)、雪駄(せった)姿で関根さんが屋台を引いている。「自作の風鈴を自分で売り歩くのは、全国で私一人では」と笑う。

 今年は6月2日から始めた。朝4時から6時までガラスを吹いて風鈴を作り、店番の合間に三嶋大社近くから桜川沿いや広小路を通り白滝公園まで往復するのがよく歩く道順。時間を決めず、雨が降れば休み。いつしか、「風鈴の屋台に会えば、幸運に恵まれる」と言われるようにもなった。

 「観光客が涼しい思いを持ち帰り、風鈴の音とともに三島の風景が頭の中でよみがえれば」と関根さんは話す。無地透明な風鈴は1980円、富士山や三嶋大社などの絵入り風鈴は2480円。【石川宏】

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