熊本市役所の建て替え場所として最終調整が進むNTT西日本桜町ビル。左奥はバスターミナルと連結する複合商業施設「サクラマチ クマモト」=熊本市中央区で2024年6月17日午後0時45分、中里顕撮影

 老朽化が進み、耐震性不足が指摘されていた熊本市役所の本庁舎について、市が建て替えの候補地を、中央区桜町のNTT西日本桜町ビル(NTT桜町)に絞り込んで最終調整していることが17日、明らかになった。大西一史市長は、24日に開かれる市議会の特別委員会に出席し、詳細を説明する意向を明らかにした。

 1981年完成の本庁舎を巡っては、市の有識者会議が2023年5月、「現行の建築基準法などが求める耐震性能を満たしていない」などとする答申を市に提出。大西市長が同6月、建て替え方針を表明していた。

 市は24年3月に示した基本構想の素案で、建て替え候補地としていずれも中央区の▽NTT桜町▽現庁舎敷地周辺▽城東エリア▽白川公園――の4カ所を示し、絞り込みを進めていた。

 NTT桜町は敷地面積9987平方メートル。素案では「現在は空きビルとなっており、早期の工事着手が可能」「桜町バスターミナルに隣接し市民の利便性が非常に高い」などと評価され、有力候補地となっていた。

 17日に取材に応じた大西市長は「24日に特別委に出席してデータや理由も含めてお示ししたい。現在最終調整中で、(公表は)今しばらくお待ちいただきたい」と述べた。

 市は建て替えの概算事業費を470億円と見込む。市町村合併した自治体で活用できる「合併推進債」で費用をまかなった場合の実質的な市の財政負担は294億円と試算する。合併推進債の起債期限は24年度末で、市はこれに間に合わせるため、9月議会で基本計画、基本設計、実施設計を一括発注する予算案の議決が得られるよう対応を急いでいる。

 ただ市が描く足早のスケジュールに、議会からは「タイトで無理がある」などの声も上がっており、合意形成が課題となっている。【中村敦茂】

市役所は「一等地」に立地

 市民に身近なサービスを提供する市役所は繁華街に近く、公共交通機関も利用しやすい「一等地」に立地するケースが多い。例えば鹿児島市役所は、百貨店や銀行が建ち並ぶ一帯から歩いて5分ほどにある。目の前を市電が走り、現在の熊本市役所と似たような立地条件となっている。

 1級河川・大淀川の前に建つ宮崎市役所は、緑地や市民プラザなど市民の憩いの場に囲まれ、幹線道路沿いにあることからマイカーで来るのにも便利だ。

 同市役所は耐震性の問題や災害時の浸水リスクから建て替え計画が進む。一時はJR宮崎駅周辺に移転する案が浮上した時期もあったが、現庁舎西側を活用する方針に転換した。新庁舎は2031年度の運用開始を目指している。【中里顕】

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