小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントを摂取した人に健康被害が広まっている問題で、紅麹原料を製造していた大阪工場(大阪市淀川区)で、誤って材料を床に落とすなどのトラブルが相次いでいたことが明らかになった。落下した材料で加工した食品用の紅麹原料を、いったんは取引先に納入していた。今年3月、同工場に立ち入り検査を実施した厚生労働省と大阪市は、工場の衛生管理の実態解明を急いでいる。

同社によると、同工場で昨年4月、紅麹菌を培養した材料を混ぜる機械のふたを閉め忘れ、床に33キロの材料が落下した。床や機械に触れていない11キロをすくい取り、120キロ分の食品向け原料に加工、いったん5月末に6社に納入したが、6月1日に回収を決定。119キロは回収できたが、残る1キロは1社がそのまま使った。

同社は健康被害との関連性について「紅麹サプリと異なる原料で特に関係はない」と説明する。いったん納入したことについては「目視による異物検査と微生物検査を行い、再利用できると判断した」と説明。ただ、「当社の衛生管理の考え方に照らし合わせても不適切だった」と回収に転じたという。

昨年12月、老朽化を理由に閉鎖された同工場ではほかのトラブルも発生。紅麹菌を培養するタンクは外側の一部を温水に漬ける構造だったが、不具合で温水が内部に混入したといい、材料はすべて廃棄した。詳しい経緯や時期について同社は「出荷していないので」と公表していない。

大阪市は3月30日、食品衛生法に基づき厚労省とともに同工場を立ち入り検査。床に落ちた材料を使った事例について横山英幸市長は今月12日、「落ちたものを拾って使うのは正しい判断だったか疑問」と述べ、ほかのトラブルについても「把握しているものが全くないわけではない」と語った。

東京大の唐木英明名誉教授(薬理学)は「床に落ちたものをすくって使うことはあり得ない。(食品衛生管理の国際基準の)HACCP(ハサップ)をきちんと守っていなかったのではないか。外部監査を義務付けるなどのルールをつくり、企業の安全文化を醸成しなければならない」と指摘している。

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