高校生たちの一声かけるやさしさが、高齢女性を家族の元に戻した。三重県警桑名署は10日、行方不明になっていた80代女性を保護したとして、いずれも桑名西高1年でサッカー部の杉山蒼太朗さん(15)と山田瑛太さん(15)、野球部の丹羽駿斗さん(15)の3人に感謝状を贈った。
5月8日午後8時ごろ、部活を終えた3人は仲良く雑談を交えながら最寄り駅の三岐鉄道三岐線の暁学園前駅まで向かっていると、前から女性が歩いてきた。
サンダルを履き、足取りは重そうだった。周りを見渡している様子に、道に迷っているのではないかと疑い始めた3人は立ち止まって話し合い、杉山さんが女性に「どちらに行かれたいですか」と話しかけた。
すると、女性は「君たちが歩いてきた方向に家がある」と話した。
女性が指し示した方向は、四日市市にある女性の自宅と実際は逆方向だった。だが、知るよしもない3人は女性の言葉に従い、歩き始めた。暗い夜道を丹羽さんがスマートフォンのライトで道を照らし、杉山さんと山田さんが女性の両脇に立って手を引いた。
学校のある山間部から市街地に向けて道を歩くこと約1時間、杉山さんの元に帰宅が遅く心配した両親から連絡が入って事情を説明。杉山さんが110番通報し、警察に女性を保護してもらった。
桑名署によると、女性は一人で留守番中に家を勝手に飛び出したという。女性には認知症の疑いがあり、心配した家族が行方不明届を提出するか悩んでいる時に、警察から連絡が届き、事なきを得た。
県警生活安全企画課によると昨年、迷い子、行方不明者、負傷者、病人を保護した件数は526人で、うち65歳以上が373人と約7割を占めた。保護された人には認知症が疑われる人も多いという。
桑名署の山沢正和署長は「声を掛けない人や、見て見ぬふりをする人もいる中、心温まる行動がうれしい。ちょっとした気づきや行動が人の命を救った」と語った。【渋谷雅也】
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