再審法の改正を求めるイベント「ACT for RETRIAL 今、変えるとき。」が大阪市で開かれ、冤罪被害者や映画監督の周防正行さんらが参加し、現行の再審制度の問題点などを訴えました。
判決が確定した審理をやり直す再審については、刑事訴訟法の19か条で規定されていますが、証拠開示の基準や手続きなどが明確ではなく、裁判所の裁量にゆだねられているため裁判所によって審理の進め方が異なる「再審格差」が生じています。
また、再審開始決定が出ても検察の不服申し立てにより審理が長引き、冤罪救済が遅れるといった問題点が指摘されていて、ことし3月には超党派の国会議員連盟も発足(今月13日時点約300人加盟)し、再審法改正に向けた議論が行われています。
こうした中、大阪弁護士会などは14日、大阪市内で再審法改正の実現に向けたイベントを開催。冤罪被害者や再審法改正を目指す弁護士、冤罪事件を題材にした映画「それでもボクはやってない」を手掛けた周防正行監督らが参加し、パネルディスカッションなどが行われました。
大阪市東住吉区の火災で女児が焼死し、殺人罪などで無期懲役が確定後、再審で無罪となった母親の青木恵子さんは、「検察のストーリーによって“娘殺しの母親”という汚名を着せられ、21年戦いました。一度勝っても(再審開始決定が出ても検察が)即時抗告をする。私たちは何回勝てば無罪になるのか」と自身の経験から、検察の不服申し立てで冤罪救済が遅れる現行制度の問題点を指摘しました。
イベントでは1966年に静岡県のみそ製造会社専務宅で一家4人が殺害された事件で死刑判決を受け、ことし9月に再審の判決が言い渡される袴田巌さんの事件を題材にした映画も上映。
弁護団の事務局長を務める小川秀世弁護士は「袴田さんは今も(拘禁反応で)普通の生活に戻って来られない。死刑が執行されなくても無実の人が勾留されているだけで、こういうことが起きることを示している」と涙ながらに冤罪被害の恐ろしさを語り、「袴田事件の場合は、警察、検察が重要証拠を隠し持っていて、その中に誰が見ても袴田さんが無実だと示す証拠がたくさんあった。証拠を隠してはいけないというのは当たり前のことじゃないですか」と、証拠開示の法制化の必要性を訴えました。
袴田さんの姉のひで子さんも「私たちは58年戦ってやっと再審開始になりました。再審になったのは証拠が開示されたから。巌だけ助かればいいと思ってない。ここで再審法改正を実行にもっていかなければなりません」と再審法改正の早期実現を呼びかけました。
「再審法改正をめざす市民の会」の共同代表を務める映画監督の周防正行さんは、「再審法が改正してすべての証拠が開示されれば、いかに多くの証拠が(警察や検察に)隠されているかが明らかになる。だったら通常審の段階から証拠開示をもっと考えようという風になっていくと思う。再審法が改正したからといって冤罪がなくなるわけではない。でも1つ1つ法律を作っていくことで、次の問題が明らかになる。なるべく冤罪が起きないように、1人1人がこの社会を気持ちよく生きて行けるように、1つ1つ解決していくしかない」と話しました。
大阪でも近く、再審法改正を目指す市民の会が発足する予定です。
大阪弁護士会 再審法改正実現大阪本部 本部長代行の秋田真志弁護士は「たくさんの冤罪が生まれている。今でも救われていない多くの人がいることに目を向けないといけない。(現行法を)運用で変えるなんていう甘いことでは無理、法改正で縛ることが大事」だと話しました。
(関西テレビ 司法担当記者 菊谷雅美)
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