和歌山県有田川町は、町内の鳥屋城(とやじょう)山で化石が発見され、海生爬虫(はちゅう)類のモササウルス類の新種と確認された「ワカヤマソウリュウ」を地域資源として生かしたまちづくりを進めると発表した。恐竜研究家で漫画家のヒサクニヒコさんがデザインしたロゴマークを作成し、古生物学者を地域プロジェクトマネージャーに採用。7月14日には「ワカヤマソウリュウ講演会」を開催する。
化石は2006年に大学院生が発見。約7200万年前の白亜紀後期のもので、県立自然博物館などの研究チームが昨年12月、モササウルス類の新属新種と発表した。全長約6メートルで前後のヒレが発達し、背ビレがあったとみられるなど他のモササウルス類と特徴が異なり、前向きの目をしていたとされる。通称名でワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)と命名された。
ロゴマークはこれらの特徴が表現され、背中の模様を「WAKAYAMA」の形にするなど、親しみを感じさせるデザインとなっている。29日~7月31日には町地域交流センターALEC(同町下津野)内のポッポ絵本館で、ヒサクニヒコさんの絵本「川をわたるペペ」の原画8点と、今回のロゴマークをデザインする過程の原画9点を展示する。
講演会は7月14日午後1時半から、同町金屋の金屋文化保健センターで開かれる。ワカヤマソウリュウの調査研究に携わった米シンシナティ大教育准教授の小西卓哉さんが「ワカヤマソウリュウはなぜすごい? 世界を驚かせた有田川町産モササウルス類の進化と研究の軌跡」と題して講演し、小西さんと県立自然博物館学芸課長の小原正顕さん、化石を発見した御前(みさき)明洋さん(北九州市立自然史・歴史博物館学芸員)による座談会もある。
講演会は定員150人で参加無料。希望者は7月11日までに町教委社会教育課(0737・22・4513)に電話するか、チラシにあるQRコードから申し込む。先着順で、空きがあれば当日参加もできるという。【姜弘修】
「強度への誇りや愛着育む」
地域プロジェクトマネージャーには古生物学者の荻野慎諧(しんかい)さんが1日付で就任した。兵庫県丹波市や福井県勝山市、徳島県勝浦町で恐竜化石を生かした町おこしに取り組んだ実績があり、7月14日の講演会では座談会の進行役を務める。
5月末に有田川町に移り住み、町地域交流センターALEC(同町下津野)にあるガラス張りの研修室を「作業部屋」として提供された。「絵本のまちの取り組みは化石とも相性が良いと思う。教育方面でいろいろできそうで楽しみ」。荻野さんが在室中は自由に訪問できる作業部屋では現在、展示用にワカヤマソウリュウの実物大の骨格模型を3Dプリンターで作製中だ。
ワカヤマソウリュウについて「これだけ保存状態が良い大きい化石というのは、国内だけでなく世界的に見ても相当貴重なもの」と評価し、「(やりたいことは)大きく分けて観光と教育。できれば関西全域に周知して有田川町に来てもらい、地元の皆さんが郷土への誇りや愛着を育む重要なコンテンツになり得る」と語った。
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