大阪地裁=大阪市北区で、曽根田和久撮影

 大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で逮捕された後に無罪が確定した不動産会社元社長が、違法な捜査だったとして国に賠償を求めている訴訟で、捜査に関わった検事2人の証人尋問が14日、大阪地裁であった。捜査を指揮した主任検事が出廷し、元社長の逮捕を見送るよう進言したとする部下の証言について「記憶に残っていない」と述べた。

 「プレサンスコーポレーション」(大阪市)の社長だった山岸忍氏(61)は、学校法人が土地売却で得た手付金21億円を着服した疑いがあるとされた。別の不動産会社元社長の男性(57)=有罪確定=は山岸氏の関与を認めていたが、2019年の山岸氏の逮捕直前に供述を撤回すると主張。これを受け、主任検事の部下に当たる男性検事が逮捕を待つよう申し出たとされる。

 この日の尋問で、主任検事は進言について「記憶に残っていないが、(部下が)そう言うなら否定しない」と説明。「供述撤回の話は聞いたが、撤回前の供述の方が信用性が高いと判断していた」と振り返った。

 そのうえで、山岸氏の逮捕の必要性を問われると、「着服額は21億円に及び、重い刑が想定される事件で、口裏合わせや罪証隠滅の恐れがあるため必要だった」と強調した。

 一方、事前に国側が裁判所に提出した陳述書で、主任検事に進言したと明らかにした男性検事も出廷した。取り調べの中で供述を撤回すると告げられたとし、「証拠関係が変わるので逮捕は待った方がいいと主任検事に伝えた」と説明。主任検事は「検討する」と答えたという。この日のうちに山岸氏は逮捕されたが、この検事は「主任検事が決めたことなので反感は抱いていない」と述べた。

 事件では、別の検事が山岸氏の元部下(59)=有罪確定=への取り調べで「検察なめんなよ」「プレサンスの評判をおとしめた大罪人だ」などと発言していたことが判明している。主任検事はこのやりとりについて「穏当なやり方ではない」と認める一方で、「弁護人からの苦情もなかった。供述の任意性に問題はない」と話した。

 この訴訟では18日にも主任検事の2度目の尋問が予定されている。【木島諒子、高良駿輔】

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