中根久喜中尉の遺書など展示品の解説をする宇佐市教委の安田晃子さん=大分県宇佐市上田で2024年5月23日午後3時24分、石井尚撮影
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 太平洋戦争末期に搭乗員の命と引き換えに敵艦を攻撃した特攻兵器「桜花」と、その作戦を実行した第721海軍航空隊(通称・神雷部隊)に焦点を当てた企画展「戦争の記憶をつなぐ―神雷部隊と宇佐―」が大分県宇佐市上田の市民図書館で開催されている。8月18日まで。桜花の機体の一部や隊員の手紙など約70点を展示し、平和や命の大切さを学べる構成にした。入場無料。

 桜花は全長約6メートルで、機首部分に重さ1トンを超える大型爆弾を搭載。長時間飛行できないことから母機で空輸され、攻撃目標に近づくと切り離されて敵艦に突入することを求められた。生きて帰ることを想定していないため、着陸のための車輪などはなく、1945年3月から沖縄防衛などに投入されたが、目立った戦果は上げられなかった。

特攻兵器「桜花」の胴体の一部=大分県宇佐市上田で2024年5月23日午後3時55分、石井尚撮影
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 神雷部隊は、桜花の搭乗員の他、桜花を空輸する母機、それらを護衛する戦闘機部隊で構成される。宇佐海軍航空隊にもその一部が配置されたが、出撃前に米軍の攻撃を受け、飛び立つことはなかったという。

 展示は2部構成で、桜花に焦点をあてたコーナーでは、市教育委員会が所蔵する桜花の風防ガラスや胴体部品を公開。パネルを使って開発の経緯なども紹介している。

山田恵太郎一飛曹が姉に宛てたはがき=大分県宇佐市上田で2024年5月23日午後2時48分、石井尚撮影
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 一方、神雷部隊の関連資料では、所属していた山田恵太郎一飛曹が姉に宛てたはがき8枚を初展示。うち1枚には「其の後皆さんも御元気の事と思ひます。私も大元気にて頑張って居ります。御安心の程、では皆お元気で」としたためている。この他、隊員たちが雪合戦をする写真や、戦闘機で特攻して戦死した中根久喜中尉の遺書も公開する。

 企画した市教委社会教育課の安田晃子さんは「極限の特攻兵器と言われる『桜花』と運用した神雷部隊が宇佐にいたということはあまり知られていない。ぜひ県内の人たちに知ってもらいたい」と話した。【石井尚】

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