秋田県内では2024年、6人がクマに襲われけがをした。人身被害が「過去最悪」となった2023年の同じ時期と同数の被害が発生している。

一方で、目撃情報は2023年の同じ時期より100件以上増加している。このうち「2024年の特徴」ともいえるのが、市街地での目撃情報の多さだ。

秋田県の野生動物情報マップで秋田市御所野周辺を見てみると、多くのクマの目撃情報が寄せられているのが分かる。住宅はもちろん、大型商業施設や学校などが立ち並び、平日も休日も多くの人が足を運ぶエリアだ。

始まりは2月。秋田市御所野湯本の物流倉庫にクマ1頭が侵入し、4日にわたってにらみ合いが続いた。本来ならば、クマは「冬眠している」とされる時期で、地域に緊張が走った。

雪が解け、クマ本来の活動期になると、住宅が立ち並ぶ生活圏でも目撃されるようになった。6月5日には、この地域を車で走行していた女性が、道路を横断する体長約50センチのクマ1頭を目撃した。近くの小学校は集団で登下校するなど、住民生活に影響が出ている。

クマよけの鈴を身に着け、ラジオを鳴らしながら歩く住民の姿も見られる。

 住民:
「毎年この時期になるとクマの出没情報が入るので、この時期はずっと鈴とラジオを持っている。あと笛とかも持っている。犬の散歩をしている人が、犬を連れてクマ鈴を下げて散歩している人も近所にいる。怖い」

「異常」といえる事態。しかし専門家は「これが日常になる恐れがある」と指摘する。

クマの生態などを研究する東京農業大学の山崎晃司教授は「推定頭数が過小評価でなければ、2023年の有害捕獲の数が相当影響を与えているので、効果が必ずあるはず。しかし、まだ集落周辺にクマを引き寄せるものが依然としてあって、集落周辺にいたクマだけでなく、山の奥からもクマが出てきているとしたら、もっと根本的な考え方を変えないといけないかもしれない」

県内のクマの生息頭数は4400頭と推測されている。一方で2023年は、その半分以上にあたる約2300頭が捕獲された。

 東京農業大学・山崎晃司教授:
「ことしの状況は変わると思っているが、現状をみていると収束していない。出没しているクマがどんな属性なのか。例えば、去年母親が殺されたクマの可能性もある。そこをきちんとより分けて、出ているクマの情報を検討していく必要があると思う。去年は秋にクマの出没が多かったので、ことしも本当にそんな状況になるのかを、これからみていかないといけない」

秋田市は必要に応じて箱わなを設置しているが、いまは御所野地区には設置していない。市によると、この地域には箱わなの設置に適した場所がないという。住宅が立ち並ぶエリアは、箱わなを設置することで仕掛けた餌が別の個体を引き寄せてしまい、住民がさらに危険にさらされる恐れがあるのだという。

様々な手は尽くされているが、「いますぐに効く対策はない」というのが現状だ。

12日は、秋田市新屋の陸上自衛隊新屋演習場でクマの目撃情報が寄せられた。

「いつでも・どこでも・誰でも」クマに遭遇する可能性があるというのは、もはや例外ではない。

一人一人が基本的な対策を徹底するとともに、どこにでもクマが存在することを心に刻む必要がある。

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