千葉県松戸市が、市内でほとんど栽培されなくなった原産の「二十世紀梨」の木を市内に残そうと取り組んでいる。「二十世紀梨保存プロジェクト事業」として、市内の造園業者から提供された苗木5本を、「21世紀の森と広場」(同市千駄堀)にある「みどりの里」エリアに3月、植えた。また、隣接する市立博物館では原木や歴史を紹介している。市内で栽培する農家が激減する中、原産地であることを多くの人に知ってほしいと力を入れる。
二十世紀梨の苗木は1888年に大橋村(現同市二十世紀が丘梨元町)で、当時13歳だった松戸覚之助(1875~1934年)に偶然、発見された。20世紀にこれ以上の梨は生まれないだろうとの期待を込めて命名された。1904年には鳥取県に渡り、現在は同県が栽培面積約195ヘクタール、販売数量4489トン(2023年)で全国1位の産地となっている。
松戸の二十世紀梨は覚之助の死の翌年、国の天然記念物に指定されたが、1947年に原木が枯死。その後も人気を誇ったが、60年代ごろから新しい品種が登場して市内の栽培は衰退していった。市によると、現在市内に52軒あるナシ農家の中でも、二十世紀梨を栽培するのは2軒だという。
しかし、市内の造園業「新松戸造園」(松戸克浩社長)が、「お花見と言えば二十世紀梨の白い花と言われるように、ナシの花文化を発信していきたい」と、2022年に鳥取県の親木から枝を取り寄せて苗木を育てる「二十世紀梨里帰りプロジェクト事業」を始めた。松戸社長は、松戸覚之助の親戚に当たるという。市内の公園や学校などを二十世紀梨の木でいっぱいにするのが目標だ。
その後、市民にも親しんでもらおうと、市と協力して今年3月に21世紀の森と広場に定植した。5月の大型連休中は一般公開もされた。同公園の担当者は「二十世紀梨の栽培は難しいが、大切に育てたい」と話している。【柴田智弘】
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