酸味と甘さのバランスが絶妙で、シャキシャキとした食感と果汁の多さが特長の「二十世紀梨」。松戸市が原産で、「二十世紀が丘」などちなんだ地名もある。しかし、本場は鳥取県に移り、市内で栽培している農家は数軒のみ。なぜ、本家・松戸で二十世紀梨栽培が衰退したのか。栽培を続けている高代園の石橋弘之さん(68)に聞いてみた。【聞き手・柴田智弘】
――松戸市で二十世紀梨が誕生したいきさつを教えてください。
◆市内では昔からナシ栽培が盛んだったと言われていますが、明治時代に当時13歳の松戸覚之助さんが偶然発見して、その後人気が出たと聞いています。かつては二十世紀梨と、甘みはあるが実が硬い「長十郎」という品種が人気を二分していました。
――しかし、今では二十世紀梨はあまり見かけなくなりました。なぜでしょうか。
◆1960年代から、新しい品種の「幸水」や「豊水」が出てきました。ちょうど私がナシ園の仕事に就いた45年ほど前には人気になり始め、二十世紀梨の需要が減っていきました。生産者側から見ても、幸水、豊水のほうが育てやすいという面もあります。
――二十世紀梨は栽培が難しいのですか。
◆黒斑病という病気にかかりやすい。黒い斑点ができて、そこから腐ってしまう病気です。対策として袋をかけないといけないのですが、実が小さい時にかけるだけでなく、大きくなると二度目の袋をかけるため、手間がかかります。袋をかけると実に日光が当たらなくなりますが、袋を1枚かけるごとに糖度が0・5度落ちると言われています。二度目の袋は二重のため、3枚だと1・5度も落ちてしまう。これは他の品種と大きな違いになってしまう。こうしたことから袋いらずで甘い幸水、豊水の方が、消費者、農家いずれからも人気が出たようです。
――高代園ではなぜ、今も栽培しているのですか。
◆鳥取県では県を挙げて栽培に取り組んだため、今では日本一の産地になっています。でも、発祥は松戸です。その松戸でなくなってしまうのは寂しい。周辺の市でもナシ栽培は盛んですが、「発祥の地」の品種というのは、松戸にとってすごいアピール力があると思います。
――春から夏に移り変わる今の時期、二十世紀梨作りでは、どういったことをされてますか。
◆実がなり始めているので、摘果する時期です。6月ごろに袋をかけていきます。ナシ全般ですが、気温が高いと味が良くなり、実も大きくなります。適度な雨と暑さが必要です。収穫期は例年、幸水が8月、豊水が8月半ば過ぎで、二十世紀梨は9月10日ごろからとなります。
いしばし・ひろゆき
観光梨園「高代園」を営む3代目。約1ヘクタールの敷地で幸水や豊水など計約400本を育てている。うち、二十世紀梨は20本ほど。「梨のもぎ取り」は8月中旬から。連絡先は047・392・9134。
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