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 生後1カ月の乳児を対象にした健康診査(1カ月児健診)に対する国の公費支援を導入済みか、または年度内に導入予定の自治体が兵庫県内全41市町の半数を下回る17市町にとどまることが県のまとめで判明した。支援制度は国の経済対策で2023年秋ごろ案が浮上、自治体の対応が後手に回っている実態が浮き彫りになった。

 乳幼児健診については、1歳半と3歳を対象にした実施が母子保健法で市区町村に義務付けられている。これ以外にほとんどの自治体で、発達の節目となる生後4、10カ月をめどに健診を実施している。

 1カ月児健診は、出産後の産婦健診と同じタイミングでされることが多いが、保険適用外のため独自の支援策がある自治体以外では全額自己負担だった。国の補正予算では5歳児健診とともに総額15億円の費用助成が盛り込まれた。助成は基本的に4000円を上限とし、国と市区町村が2分の1ずつを負担、実質無料となる内容だ。

 県の調査で4月1日現在、導入済みだったのは姫路など14市町。24年度中に導入を予定していると回答したのは神戸、三木、養父の3市にとどまっている。三木市は6月以降、神戸市は秋ごろの導入を目指している。既に独自で全額負担をしている養父市は国制度への切り替えを進めている。これ以外に加西市も独自に2カ月健診を実施している。

1カ月児健診支援の実施市町

 導入が進まない理由はさまざまだ。香美町は前向きだが時期は未定。地理・経済的に結びつきが強い鳥取市内で出産・健診を選択する町民も多く、制度化するには県域をまたいだ行政や病院側との調整も必要になる。

 西宮市も年度当初の導入に間に合わなかった。こども家庭庁から事務連絡、マニュアルが届いたのは24年度の市予算編成がほぼ終わった23年末。自治体にも負担が生じるため、担当者は「財政状況が厳しい中、なかなか予算が取れない。せめて全額を国が持ってくれれば」とこぼす。また、同じく国の肝いりで22年度途中に始まった、10万円相当の「出産・子育て応援交付金」の支給を現金から電子クーポンへ切り替える手続きなどで人的余裕もない。25年度の導入を目指し、準備を進めているという。

 別の市の担当者は「自治体のシステムの改修費だってばかにならない。住民サービスなので早く進めたい気持ちはあるが正直しんどい」と明かす。導入のめども立っていないという。【入江直樹】

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