【物流】北海道郵便逓送(札幌)は郵便物の運送をはじめ、航空コンテナなどの貨物輸送を請け負っている。中田公成社長に、送る人と受け取る人の心とモノのやり取りを支える仕事の魅力とやりがいを聞きました。

創業家 大学卒業直前に銀行員の父親に勧められて入社

――どういう仕事を担われていますか?
お客さまが郵便ポストや郵便局に差し出してくださる郵便物は郵便局員さんが大きい郵便局に集めており、北海道郵便逓送は大きい郵便局から大きい郵便局に運ぶ拠点間輸送を担っています。郵便運送の動脈や静脈の部分の仕事をしています。

――ご出身はどちらですか? どんなお子さんで、学生時代はどう過ごされましたか?
札幌出身です。実家の隣に北海道郵便逓送の3代目社長で、祖父の弟の中田公治さんが住んでおり、郵便を運ぶ仕事をしているという感じで見ていましたが、父が銀行員だったので、将来、私は銀行員になるだろうと思っていました。学生時代は就職を考えずに、自転車競技をやっていましたが、北海道郵便逓送の創業家でもあり、大学を卒業する間際に父に勧められて入社しました。


青年会議所で学んだ利他の精神 地域を活性化させ、業績を上げる

――若い頃の仕事は? 転機はありましたか?
最初は労働集約産業の基礎である労務管理や、車両管理などをしっかりたたきき込まれました。34歳のとき、8代目の加藤欽也社長に「世の中を知って来い」と勧められ、札幌青年会議所に入会しました。同年代の社長と一緒に活動し、多くの刺激を受け、仕事に対する考え方を学ばせていただきました。青年会議所はまちづくり団体と言われます。地域が活性化することで、最終的にその地域で仕事をする会社も経済循環して、より良くなる―。利他の精神を学ばせていただきました。

――社長就任はいつですか? 
昨年6月です。労働集約型産業なので、まずは現場を回り、社員とコミュニケーションを図って、私のやる仕事を再確認しました。「安全は絶対」を確認でき、良かったです。


送る人から受け取る人へ 確実に届けるのは絶対のやりがい

――トラック運転手の時間外労働が規制強化されることに伴い、ドライバー不足などが懸念される「2024年問題」があります。
コロナ禍の前からドライバー不足が言われ、この状況はある程度、想定されたと思います。古い会社なので、これまでホームページにあまり力を入れていませんでしたが、採用のページを充実させ、モバイル対応もしました。今年は労働環境をもっと良くすると早々に宣言しており、週休2日制の完全実施のために一生懸命、採用しています。

――若い人にどういう思いで入ってもらいたいですか?
われわれがいなければ、届かないものがあります。荷物も郵便も出す必要性がある人がいて、必然で出している。待っている人に無事に届けることは本当にすごいことだと思います。誰かが介在しなければ、指定された時間通りに無事に届けるのは不可能なので、絶対にやりがいはあります。会社に入って、われわれの仲間に接すれば、その良さが分かると思います。


中継運行でドライバーの負担軽減 地域貢献で図る社員の意識改革

――力を入れて取り組まれていることは?
労働環境の改善に向けた中継運行です。全道に13拠点があり、(長距離輸送を複数のドライバーで分担するため)トラックを(出発地と到着地の双方から)走らせて途中の中継ポイントで(落ち合って)車を乗り継いでドライバーはそれぞれ引き返します。(この運行の導入で)ドライバーがその日のうちに自宅に帰れる環境づくりをどんどん進めています。社会貢献活動では知的障害のある人にスポーツの機会を提供する国際的な組織「スペシャルオリンピックス日本・北海道」の活動支援や、社会的に孤立したり、困窮したりしている方々を応援する施設「いとこんち」にも協力をしています。例えばトラックに積んである非常食が交換時期になると、「いとこんち」に差し上げて配っていただいています。社員に、社会貢献をする会社の一員と意識してもらえれば、最終的にやりがいのある仕事、やりがいのある会社であると認識し、仕事の質につながればと思っています。

――会社で働く人のためにも社会貢献をするという考え方ですか?
良いお仕事をさせていただく以上、地域に(利益を)還元する責務があると思います。その理解を社員に求めています。今年2月、スペシャルオリンピックスの全国大会が名寄で開かれたときに、ボランティアを募集したら、多くの社員が手を挙げてくれました。(社会貢献の意味や重要性を)理解してくれて大変、うれしく、誇りに思います。


社員へ応援の声が届く会社に 北海道の魅力発信 広がる運送業の可能性

――まさに利他の精神ですね。その思いを社員と共有されていると強く感じます。ボスとして大切にされていることは?
社員があっての会社です。トラック運送業の仕事は生活リズムをとるのが難しく、危険な作業もあります。私が社員の応援団として、「みんな気をつけて行ってね。頑張って無事に帰ってくるのだよ」という声がきちんと社員に届く会社にしたいです。届け、運ぶことで社員みんなが幸せになり、地域貢献をして地域に(利益を)還元できると思っており、会社を維持、発展させたいですね。

――北海道で事業を続ける意味を教えてください。
昭和20年に誕生した会社で、来年は創業80年になります。素晴らしい郵便を、創業100年に向けて届け続ける会社でありたいです。私は道民で、北海道が大好きです。北海道の魅力を発信するツールとして、例えば、今の輸送技術では北海道の雪を、雪の降らない暑いアジアの国々に運び届けることができます。北海道をアジア諸国により知ってもらう可能性を秘めている業界だと思います。これから、いろいろあると思いますが、楽しみながらやっていきたいです。

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