石川県庁=石川県金沢市鞍月1で2019年2月22日、日向梓撮影

 1月の能登半島地震で被害が集中した石川県の奥能登地方(輪島市と珠洲(すず)市、穴水町、能登町)で3月と4月の死亡届の合計が293人分に上り、過去5年間の平均より69人分(3割)増えていた。県と4市町が公表しているデータから明らかになった。地震から2~3カ月後でも死亡届が減っていないことから、災害関連死が今後も増える可能性が浮かんだ。

 県と4市町の人口動態を毎日新聞が集約したところ、奥能登の1月と2月の死亡届(計525人分)は、2019~23年の同じ時期の平均(266人分)より259人分多かった。

 この結果、3月と4月のデータと合わせると、1~4月では過去5年の平均より328人分増えていたことになる。

 奥能登で建物の倒壊など地震が直接的に影響して死亡した人について、県は6月4日時点で222人と発表している。ただ、金沢市など4市町外から帰省中に巻き込まれた人も含まれており、帰省中の犠牲者の死亡届は基本的に住んでいる自治体に提出される。そのため、4市町の直接死による死亡届は222人分より少なくなる。

 こうした状況を踏まえると、奥能登の例年より多かった死亡届の人数分から、直接死による死亡届を差し引いた人数(百数十人)は、病死や事故死などを考慮しても災害関連死の可能性がある。

 今回の地震の災害関連死は、5月中旬までに30人が認定されている。奥村与志弘(よしひろ)・関西大教授(総合防災・減災)は「集約されたデータを見て正直、衝撃を受けた。3~4月の死者が例年より多いのは、全てとは言えなくても、災害関連死が多く含まれていると推定できる」と評価する。

 その上で「仮に3~4月に40~50人が関連死しているのであれば、1~2月はもっと多いだろう」と話す。

 奥村教授も独自の分析をしている。1月上旬に能登半島地震の避難者数や避難所での死亡件数などを過去の災害と比較したところ、災害関連死は20~30人、支援が入らないなど悪条件が重なれば100人を大きく超えてしまう恐れもあったという。

 今回の人口動態の集約データから浮かぶ可能性は「想定以上になりそうだ」と語った。

 能登半島地震の災害関連死を巡っては、県は当初、疑いのある人を15人と公表していたが、関連死と認定するための関係市町による審査会が開かれたのは5月中旬だった。その間、関連死がどれほど発生しているかの情報はなかった。

 奥村教授は「関連死の発生率は、新潟県中越地震(04年)や熊本地震(16年)をはるかに超え、東日本大震災(11年)の岩手・宮城県並みになるかもしれない。関連死は発生状況をなかなか把握できない。今回も事態の深刻さを社会で共有することができなかった」と指摘した。

 一方、死亡届を月別にみると、災害関連死が増加する可能性以外の状況もうかがえる。2月のデータを見ると325人分の届け出があり、23年の時と比べると2・7倍に増えていた。

 死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に届けることが、戸籍法で定められている。だが、被災地では避難生活が続いているため、死亡届に必要な死亡診断書や死体検案書が入手できず、2月以降にずれ込んだとみられる。

 奥村教授は「死亡者数は災害の実像を示す示唆に富んだ数字だ。例年に比べてどの程度多いか、これ以上の犠牲を出さないためにも各自治体は引き続き注視してほしい」と話した。【竹中拓実】

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