認知症になった人が自身の望む外出を長く続けられるように、毎日新聞はみなさんの工夫や体験談、あってほしい支援などの意見を募集します。
友だちに会いたい、散歩や買い物に行きたい、仕事や趣味の場に通いたい……。
認知症があろうとなかろうと、外出することは、自分の人生を歩み続けるために欠かせないものです。一方で、認知症の人の行方が分からなくなったとして警察に届け出られる件数は増え続けています。その中には亡くなる人や、見つからないままの人もいます。
本人の「自由」と「安全」を両立させることから、外出は、認知症の人が直面する象徴的な課題とも言えます。安易に閉じ込められることなく、本人らしい暮らしを長く続けるにはどうすればいいか。みなさんの知恵を貸していただきたいです。
送っていただいた情報や工夫は、認知症の当事者や家族とともに安心できる地域づくりに取り組んでいる認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子副センター長と共有して、みなさんとともに考えていきます。永田さんは「望んだ外出をできることは、本人、そして家族や地域に想像以上の喜びや活力を生みだします。それぞれの小さな工夫を集めて、ともに暮らしやすい社会を具体的につくっていきましょう」と話しています。
それぞれの状況や立場、経験によって、感じる課題は異なると思います。認知症当事者である本人や家族、専門職などそれぞれの視点からの思いもぜひお聞かせください。【銭場裕司】
情報の応募はこちらから
■郵送 〒100―8051 東京都千代田区一ツ橋1の1の1 毎日新聞社会部東京グループ「認知症の人の外出 あしたへつなぐ」係
■メール t.shakaibu@mainichi.co.jp
■情報提供窓口「つながる毎日新聞」の投稿フォームによる応募も可能です
みなさんに協力をお願いする理由 詳しく説明します
私(銭場)が認知症の人の外出について考えるようになったきっかけは13年前にさかのぼります。
認知症だった田中紀行さん(当時71歳)が2011年5月2日に北九州市の自宅を出たまま、見つかっていないことを聞きました。家族は今も帰りを待っています。捜し続けている家族は各地におり、本人を守れなかった後悔を抱えて深く苦しんでいました。
認知症とその疑いがある人について、22年に警察に行方不明者届が出された件数は1万8709人に上り、この10年でほぼ倍増しています。多くは無事に発見されるものの、届け出があった人のうち死亡して見つかる人は毎年400~500人前後に上ります。
報道が偏見を生む不安も
こうした実態を社会の課題として知ってもらうために記事にして伝えてきました。その中で、行方不明に関する報道が「認知症になると何も分からなくなる」といった偏見を強めてしまう不安も感じるようになりました。
「認知症の人にはチップを体に埋め込んで(位置情報で)場所が分かるようにした方がいいですね」
大学生からそんな感想を聞き、人を人とは思わないような言葉にショックを受けたこともあります。
認知症の人たちはどんな思いでいるのか。それを知ろうと、この数年は当事者や家族のみなさんと活動をともにするようになりました。そうして本人の表情や声に触れる中で、認知症になっても充実した時間は持てると教えられました。
望んだ場所に出かけられることは「生きる」ことにつながっていました。移動時などにちょっとした手助けがあれば、より楽しめる時間を増やせることも実感しました。そして、その「ちょっとした手助け」を得ることが決して簡単ではないことにも気付きました。
家族だけの付き添いには限界も
課題も見えてきました。多くの家族は本人の望む外出の大切さを理解しながらも、道に迷うような事案が起こると、その後の対応に悩みます。ヒヤヒヤした気持ちで本人を送り出している人も少なくありません。家族の立場になれば当然の思いでしょう。
事故が起きないように必ず付き添い、片時も目を離さないようになると、家族自身が精神的に苦しくなることもあります。家族の心も守り、当事者を支えられる地域や社会をどうつくるのか。そうした点も今回考えたい大切なポイントになります。
行方不明になった人を捜し続ける家族の声にもしっかりと向き合って、耳を傾けたいです。苦しい立場にいる家族を孤立させることなく、今ある制度や対応が十分なものか、具体的に検証していく必要があります。
「あしたへつなぐ」ための試み
このほかにも、1人暮らしの人の外出や暮らしをどう守るか、など目を向けるべき点はたくさんあります。人によって状況は変わるため、必要とすることや求めるものはそれぞれ異なります。みなさん自身が感じる課題や思いをどうぞお聞かせください。
毎日新聞は30年を目標に果たすべき役割として「見逃されがちな社会課題を照らし出し、伝えることで、誰もが自分らしく生きられる社会を実現していく」ことを掲げています。今回の試みは課題をともに考えることで、ほんの少しでも「あしたへつなぐ」ことを目指して進めていきます。
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