クラシックやポップスなど、世界のさまざまな音楽をテーマにした優れた書籍を表彰する「音楽本大賞」の第2回受賞作が決まり、6日夜、東京都港区六本木6の書店「文喫」で授賞式が行われた。大賞には「ミュージック・ヒストリオグラフィー」(松本直美著、ヤマハ)が選ばれた。
音楽を言葉で伝えることは難しい。同賞は、その難題に挑む書き手や翻訳者に光を当て、音楽を言語化する営みを活発化しようと昨年創設された。
主催は、出版社の編集者らでつくる実行委員会。授賞式の前年に出版された本を対象に、音楽家の横川理彦さんら5人が選考した。
大賞作のテーマは音楽史。学校の理科室に科学者の肖像画はほとんどないのに、なぜ音楽室にベートーベンらが掲げられているのか――など身近な疑問を取り上げた。また、歴史上の人物は西洋の白人男性に偏重している点に着目し、ジェンダーや人種の問題にも迫った。
分かりやすい文章で解説し、音楽の新たな可能性を切り開いた点が評価された。
松本さんは京都市出身。愛知県立芸術大を卒業し、現在は英ロンドン大ゴールドスミス校の上級講師として学生を指導している。オンラインで式に臨み、「私たちは歴史から物の見方を学ぶ。探偵のように一つの手がかりから背景に迫った」と執筆の過程を語った。
また、音楽文化の多彩な可能性を子どもたちに伝えたとして「小学館の図鑑NEO 音楽」(小学館)に特別賞が授与された。制作にかかわった神森徹也さんは「古今東西の音楽それぞれにとびっきりの魅力がある。本書をきっかけに、生演奏に触れ心を震わせて」と呼びかけた。
このほか選考委員による個人賞5冊の関係者に賞状などが送られた。【田中泰義】
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