実証事業で食品の巡回配送に使われる燃料電池トラック=大分市で2024年4月11日午前11時18分、李英浩撮影

 エネルギー関連企業など産官学でつくる大分県エネルギー産業企業会は、脱炭素社会の実現に向け、水素で動く燃料電池トラックを走らせる実証事業に乗り出した。6月末まで、大分、別府、杵築、日出の4市町で週6日ほど走行させ、課題や導入可能な台数などを検証する。【李英浩】

 燃料電池車の将来的な本格導入に向け、水素の製造と利用を両立させるサプライチェーン(供給網)の構築を目指す事業の一環。

 同会の事務局を務める県新産業振興室によると、県内は地熱など再生可能エネルギーが豊富で、その自給率は全国2位。一方で、製造業など産業が集積しているため、水素の製造と利用の両面で潜在力が高いとみて、燃料電池トラックを導入できないか、可能性を探ってきたという。

 実証は、会に加盟する物流会社、東九州デイリーフーヅ(大分市)が、委託を受けて実施。トヨタ自動車などが共同出資する商用車開発連合「CJPT」の小型燃料電池トラックを使って食品を巡回配送し、燃費や走行性などを確認する。トラックは、水素が満タン(10・5キロ)なら、約260キロ走行できるという。

 燃料の一部は、ゼネコン大手の大林組が九重町で生産する地熱由来の水素を利用。水素の充塡(じゅうてん)作業は、江藤産業(大分市)の水素ステーションで実施するなど県内インフラを活用し、供給網の構築を図る。

 11日にはフーヅ社の拠点でトラックの試運転があり、佐藤樹一郎知事が試乗。「スムーズで、乗用車に乗っているような感覚。運転手の疲れも少ないのではないか」との感想を述べた。同社の田中辰典社長は「(水素車の普及は)いつか来る世界と分かっていても、広がりづらい領域。今回のように一歩踏み出すことが大きいと思う」と取り組みの意義を強調した。

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