六甲ウィメンズハウスを最初に構想した認定NPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」代表理事の正井礼子さん=神戸市灘区で2024年6月5日午後3時23分、稲田佳代撮影
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 孤立した女性たちに安心できる住まいで自分らしさを取り戻してほしい――。女性支援団体が抱いてきた夢が5日、実現した。所持金が少ない、保証人がいないなどの理由で住まいを確保しにくい女性のためのシェアハウス「六甲ウィメンズハウス」がこの日、神戸市灘区にオープンした。

 シェアハウスの居室は40戸で、広さは19・5~57平方メートルの8タイプ。敷金・礼金・仲介手数料は不要で、家賃は2万8000~5万2000円と生活保護の受給者でも入居可能な額に設定した。

六甲ウィメンズハウスのカフェスペース=神戸市灘区で2024年6月5日午後1時21分、稲田佳代撮影
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 女性と子ども限定で、小学生までの子がいる自立を希望するシングルマザーや、児童養護施設出身など自立を目指す18~20歳の若年女性、困窮する学生や留学生、就労して自立を目指す単身女性の入居を想定している。希望者は事前面談が必要で、支援員や相談員による生活や就労のサポートを受け、原則3年(学生は4年)で自立を目指す。

六甲ウィメンズハウスの一番大きな居室。台所、風呂、トイレ付きでイケアが提供した家具が備え付けられている=神戸市灘区で2024年6月5日午後1時3分、稲田佳代撮影
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 コミュニティーカフェ▽学習室▽キッズスペース▽シェアオフィス――など共用施設も備え、入居者同士や地域住民が緩やかに交流できる工夫が凝らしてある。

 建物は生活協同組合コープこうべ(同市東灘区)が元女子寮の2~4階を提供し、今後、食料支援やコープでの求人情報も届ける。内装はイケア・ジャパン(千葉県船橋市)が全室のデザインと家具の提供、設置まで担い、明るく機能的に調えられた。

 シェアハウスの開設は、神戸市で30年以上にわたりDV(ドメスティックバイオレンス)被害者やシングルマザーらを支援してきた認定NPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」の代表理事、正井礼子さん(74)の悲願だった。

 2010年にデンマークの女性支援の視察に行き、おしゃれで温かい雰囲気な上、子育てやプライバシーに配慮が行き届いた母子施設を見て「日本でもこんな住まいをつくりたい」と夢が生まれた。帰国後、長女が描いたイメージ図を持って支援仲間や行政、財団など各所に熱意を語り続け、21年に留学生支援の公益財団法人「神戸学生青年センター」と共同での整備・運営が決まった。

 正井さんは「孤立してつらい環境で暮らしている女性はいっぱいいるけれど、勇気を出して相談してほしい。安心安全な住まいで元気になってもらい、自分らしく生きていく最初の一歩を応援していきたい」と話す。

 入居相談は六甲ウィメンズハウスのホームページから。【稲田佳代】

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