鹿児島県警本部の生活安全部長だった本田尚志容疑者(60)が警察の内部資料漏えいの疑いで5月31日に逮捕されました。この事件をめぐり6日、弁護士が勾留理由の開示を求める手続きが鹿児島簡易裁判所で開かれ、本田容疑者は「県警職員が行った犯罪行為を県警本部長が隠ぺいしようとしたことが許せなかった」と語りました。本田容疑者の意見陳述(弁護士提供)は以下の通りです。
今回、職務上知り得た情報が書かれた書面を、とある記者の方にお送りしたことは間違いありません。
私がこのような行動をしたのは、鹿児島県警職員が行った犯罪行為を、野川明輝(のがわあきてる)本部長が隠蔽しようとしたことがあり、そのことが、いち警察官としてどうしても許せなかったからです。
野川本部長は、令和4年に赴任されました。
野川本部長は、独断ですべてを決められる方で、我々の考えを本部長に提案しても、本部長の一存で否定されることが多く、多くの職員が疲弊し、考えても無駄だという雰囲気が広がっていきました。
そんな中、令和5年12月中旬、枕崎のトイレでの盗撮事件が発生しました。
この事件で、容疑者は、枕崎署の捜査車両を使っており、枕崎署の署員が容疑者であると聞きました。
この事件は、現職の警察官の犯行ということで、野川本部長指揮の事件となりました。
生活安全部長として、この事件の報告を受けた私は、現職の警察官がこのような犯罪を行ったということに強い衝撃を受けました。
当時、既に複数の警察官による不祥事が発覚しておりましたので、県警の現状に危機感を抱くとともに、県民の皆様に早急に事実を明らかにして、信頼回復に努めなければならないと思いました。
我々としては、当然、早期に捜査に着手し、事案の解明をしようと思いました。
そして、私は、捜査指揮簿に迷いなく押印をし、それを、野川本部長に指揮伺いをしました。
しかし、野川本部長は、「最後のチャンスをやろう。」「泳がせよう。」と言って、本部長指揮の印鑑を押しませんでした。
この時期は、警察の不祥事が相次いでいた時期だったため、本部長としては、新たな不祥事が出ることを恐れたのだと思います。
私は、本部長が警察官による不祥事を隠蔽しようとする姿にがく然とし、また、失望しました。
県民の皆様に申し訳が立たないと思いました。
私は、いち警察官として、目の前に犯罪があり、容疑者も分かっているのに、その事実を黙殺しようとする姿勢が理解できず、心底腹が立ちました。
県民の皆様の安全より、自己保身を図る組織に絶望しました。
そんな中、現職警察官による別の不祥事が起こりました。
それは、警察官が一般市民の方から提供を受けた情報をまとめた巡回連絡簿を悪用して犯罪行為を行ったというものでした。
この件についても、現職警察官の事件ということで本部長指揮の事件となりました。
私は、この件についても、県民の皆様の信頼を失う行為であることから、この事実を県民の皆様に公開し、説明すべきだと思いました。
しかし、この事件も、明らかにされることはありませんでした。
私は、不都合な真実を隠蔽しようとする県警の姿勢に、更に失望しました。
私は、今年の3月で、警察官の職を定年で退職しました。
ですが、私が定年退職する時期になっても、枕崎の件も、別の不祥事の件も公表されることはありませんでした。
私は、警察官として、「嘘を言うな。隠すな。」との教育を受けてきました。
不祥事があった場合には、それを隠すのではなく、県民の皆様に明らかにした上で、改善を図っていくべきだと思っていました。
しかし、現状の鹿児島県警は、その教えに反し、事実を明らかにしようとしませんでした。
私は、自分が身をささげた組織がそのような状況になっていることが、どうしても許せませんでした。
私は、退職後、この不祥事をまとめた文書を、とある記者に送ることにしました。
記者であれば、個人情報なども適切に扱ってくれると思っていました。
マスコミが記事にしてくれることで、明るみに出なかった不祥事を、明らかにしてもらえると思っていました。
私が退職した後も、この組織に残る後輩がいます。
不祥事を明らかにしてもらうことで、あとに残る後輩にとって、良い組織になってもらいたいという気持ちでした。
実際、私が送った文書がきっかけになったと思いますが、枕崎署の署員の事件は、今年の5月になって、署員が逮捕されることとなりました。
今回、私が行った行為により、多くの方々にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ないと思っています。
ですが、私としては、警察官として、信じる道を突き通したかったのです。
決して自分の利益のために行ったことではありません。
鹿児島県警においては、間違っていることは間違っていると認め、県民の皆様に、再び信頼してもらえる組織に生まれ変わってくれることを心より願っております。
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