「昆虫の聖地」を自称する福島県田村市は、市有林にミヤマクワガタやカブトムシなどの採集を体験できる場を整備する。市は、観光のほか、昆虫を活用した新たな地域振興につなげたい考えだ。
候補地は、旧昆虫館「カブト屋敷」一帯。新たな昆虫館とカブトムシ1000匹を放つ施設が近くに開館した昨年以降、休眠状態が続いている。市は、今年度内に建物の一部を撤去し、裏手の山林約2万平方メートルのうち、比較的平たんで子どもにも安全な約2000平方メートルを体験場とする方向で検討を始めた。
田村市は昨年7月、仮想部署「昆虫課」を役所内に設置し、「昆虫と共に自然共生社会を実現する」「日本で唯一の虫の楽園」などを東日本大震災後の復興の<目玉>にする。第三セクター「市常葉振興公社」が募集するインセクトツーリズム(採集体験旅行)への申し込みも定員を満たすなど好評だという。
一方で、「山に入って採集は可能か」「捕れる場所の位置を教えてほしい」などの問い合わせも首都圏などから相次いだ。広葉樹林が生える市内では、腐葉土の中でカブトムシの幼虫などが成長する。ところが、すんでいる山林は民有。ツーリズムの実施場所も、地元住民らの好意に頼っているのが現状だ。
このため、市有林を使って体験場を提供することにした。繁殖で育てた昆虫の放出は行わず、あくまで自然林。親子ともに楽しめるのを前提に来年度、基本設計を始める。完成年度は未定だが、旧昆虫館の建物撤去跡の試験的な整備も検討する。白石高司市長は4日の記者会見で「昆虫という『切り口』で風評払拭と復興、交流人口拡大へ歩んでいく」と話した。【根本太一】
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