死刑囚2人が死刑執行を当日に知らせるのは違法だとして国を訴えた裁判で、大阪地方裁判所は原告の訴えを退けました。

■死刑執行を知らせるのは1~2時間前

訴えによると法務省は、死刑の執行について、1時間から2時間前になって初めて、本人に知らせる運用をしています。

死刑囚2人は、「不服申し立てをする権利が侵害されるなど憲法違反だ」などとして刑の執行に従う義務がないことの確認を求め、さらに「当日告知のため、いつ執行されるのか、事前に知らされないことで恐怖を感じている」などと主張し、国に対し慰謝料として2200万円の損害賠償を求めていました。

■死刑囚の肉声テープも証拠に

裁判で原告側は、1955年に当時の大阪拘置所の所長が録音した、執行の2日前に告知を受けた元死刑囚が姉と面会する様子など、肉声が録音されたテープを証拠として提出しました。

【死刑囚の肉声】
「姉さんもう泣かんで笑って別れましょう。お母さんにもよろしくお伝えくださいね。そして子どものことをくれぐれもよろしくお願いします」

一方国側は、「当日より前に告知すれば、大きな苦痛を与える」などと主張し、訴えを退けるよう求めていました。


■訴えについて内容を審理する前に退ける「却下」の部分も

15日の判決で大阪地裁はまず、「当日告知が憲法違反であり、執行を受け入れる義務がないと確認すること」を原告側が求めた点については、「死刑執行方法に関する憲法違反・法律違反については刑事裁判で争うべきで、今回のような行政訴訟で執行を受け入れる義務がないことを確認するということは、確定した刑事裁判での判決が命じた現在の執行方法(当日告知も含む)による死刑執行を許さないという効果を生じさせ、矛盾を生むことになってしまう」などと判断。訴えについて内容を審理する前に退ける、却下としました。

■執行前日に告知を受けた死刑確定者が自殺した例などを提示

そして損害賠償を求めた点については、「当日の告知は、過去に執行前日に告知を受けた死刑確定者が自殺した事件を受けたもので一定の合理性がある」、「原告らは死刑判決が確定していて、当日告知を含めて現在行われている執行方法による死刑を甘受すべき義務を負う立場にある」などとして訴えを退けました。

■弁護団「国は人権を守らないといけない」

弁護団は判決言い渡しの後の記者会見で、控訴することを明言するとともに、次のように述べました。

「今回の裁判は死刑廃止を訴えったものではない。死刑執行を受け入れる人は、きょう執行されるかもという恐怖の中で暮らしている。死刑では死は受け入れているが、それ以上の苦しみを執行まで与えていいのか。国際的にも死刑以上に恐怖は与えてはいけないと。残虐な虐待に当たるとされている」

また死刑囚は殺人によって死刑となっていることから、被害者は突然殺害されるのに、死刑囚には事前告知が必要なのか、という世論があることについて聞かれ、弁護団は次のように述べました。

「死刑は国が刑罰として執行するもので、国は死刑囚であっても人権を守らないといけない。世論も、死刑に処されるような犯罪を犯した人でも、死刑執行されるまでに食事を与えないでいいとは考えない。病気になっても治療したくてもいいとは考えない。何をしてもいいのではないと」

判決を受けて国(法務省)は、「国の主張が受け入れられたものと認識しています」とコメントしています。

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