富士山北面に広がる北富士演習場=山梨県山中湖村で2018年2月、小田切敏雄撮影

 30日午前8時40分ごろ、陸上自衛隊北富士演習場(山梨県)で訓練中に手りゅう弾の破片が隊員1人に当たった。陸自によると、隊員は第1師団第1普通科連隊(東京都練馬区)所属の山宮拓3等陸曹(29)で、救急搬送されたが、同10時50分に病院で死亡が確認された。

 これを受け、陸自は全部隊に対して安全確認ができるまでの間、全ての実弾訓練を一時中止するよう指示した。

 陸自によると、同連隊は27~31日の日程で、射撃能力を向上させることを目的に、迫撃砲や対人狙撃銃などの各種火器を用いて249人で野営訓練を実施していた。このうち手りゅう弾の訓練には23人が参加し、30日は午前8時半に開始した。山宮3曹は指導役だった。

 訓練で別の隊員が4投目を投てきした際、飛び散った破片が山宮3曹に当たった。他にけがをした隊員はいなかった。手りゅう弾は目標付近に投げられ、正常に作動していたという。

 陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は30日の定例記者会見で、「武器を扱う組織として決してあってはならない。重く受け止めている」と述べた。陸自の警務隊が訓練に参加した隊員から事情を聴くなどして当時の詳しい状況を確認している。今後、第1師団の上級部隊の東部方面隊に事故調査委員会を立ち上げて原因究明を進めるという。

 一般的に手りゅう弾の訓練では、地面に掘った穴などから目標に向かって手りゅう弾を投げた後、殺傷力のある破片の飛散に巻き込まれないよう安全が確認されるまで穴などに身を潜めるようにしているという。

 手りゅう弾による隊員の死亡事例としては、1958年5月、福岡県久留米市の幹部候補生学校の教育中に起きた記録が残っている。【松浦吉剛】

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