紅麹コレステヘルプ=東京都千代田区で2024年4月8日、前田梨里子撮影

 小林製薬(本社・大阪市)の紅こうじサプリメントによる健康被害を巡り、厚生労働省は28日、同社から提供を受けた原料のサンプルに含まれていた青カビが作り出す天然化合物「プベルル酸」について動物実験の結果、腎障害を引き起こすことを確認したと発表した。またサプリの原料を製造していた大阪市の工場などから青カビを検出したことも明らかにした。厚労省は健康被害との関係については調査を続けるが、政府は調査結果を踏まえ週内にも関係閣僚会議を開いて対応方針を決定する方針。

 厚労省によると、同社から提供を受けた原料のサンプルから、プベルル酸のほかに2種類の化合物を検出したことも明らかにした。2種類の化合物は青カビと紅こうじ菌により作り出されると推定されるという。

プベルル酸とは?

 サプリを摂取した人を対象に日本腎臓学会が実施した調査では、腎臓の機能が低下する「ファンコニー症候群」が多くの人にみられた。厚労省はプベルル酸について、ラットに7日間繰り返し投与したところ、尿細管の壊死(えし)などが確認されたという。厚労省は、プベルル酸以外に見つかった二つの物質についても、同様に試験を実施する。

 青カビは大阪市と和歌山県の工場から検出された。大阪市の工場では、紅こうじの培養段階には既に混入していたとみられるという。

 一方、プベルル酸以外の2種類の化合物は、データベースや文献に合致する情報がなく、未知の天然化合物とみられる。

 武見敬三厚労相は28日、首相官邸を訪れ、岸田文雄首相に調査結果や今後の対応方針などを説明した。

 小林製薬の紅こうじサプリは消費者庁に届け出ていた機能性表示食品で、厚労省は消費者庁などと連携し、近く今後の対応方針を示す。政府・与党は、機能性表示食品のサプリを販売する事業者に対し、製造・品質管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証を取得した工場での製造や、健康被害を覚知した際の速やかな国への報告を義務付ける方針を固めている。【肥沼直寛、松本光樹】

プベルル酸

 青カビが作り出す天然化合物として、1932年に英国の研究者が初めて発見した。2011年に北里大の研究チームが感染症マラリアの治療薬候補物質として報告するなど、マラリア原虫や家畜伝染病の原因となる寄生虫への効果が近年明らかになっている。ヒトの細胞や腎臓への毒性は不明。小林製薬のサプリメントには本来含まれていない。

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