福島地裁=福島市花園町で、錦織祐一撮影

 皇室への献上名目で農作物が詐取された事件で、詐欺などの罪に問われた農業園芸コンサルタント、加藤正夫被告(75)=東京都=の公判が27日、福島地裁(島田環裁判長)であり、宮内庁職員が証人尋問で献上の事実を否定した。加藤被告や被害に遭った農家らの名義で一方的に荷物が送られたことも「記録にない」と否定した。

 証言したのは宮内庁総務課で献上品に関する実務を担当する職員。宮内庁で作っているリストや関係各課への聞き取りを基に、平成以降、個人や新規の献上品を受け取ったことは「ありません」と明言。「献上したいという申し出を受け入れると際限が無くなる」と理由も述べた。

 加藤被告はこれまでの公判で「献上品の推薦権限はあった」として無罪を主張しているが、職員は推薦権限を持つのは都道府県知事で、個人に付与することはないと説明した。

 加藤被告が「宮内庁から6年前に送られた」などと主張する「献上依頼書の原本」についても「宮内庁が作成した文書ではない」と断言。宮内庁が献上品の成分を分析したことや、特定の個人に献上品やその情報の提供を依頼したことも「ありません」と証言した。

 起訴状によると、加藤被告は2022年6月~23年3月、献上品を選定する権限があると装い福島県や茨城県の農家に宮内庁管理部大膳課名義の「献上依頼書」を渡し、桃やトマトなどをだまし取ったなどとされる。

 次回は6月11日に被告人質問が予定されている。【西夏生】

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