ハトやカラスへの餌やりに伴う被害が起きているJR我孫子町駅付近の路上。フェンスには「えさをあたえないでください」という看板がかけられている=大阪市住吉区で、鈴木拓也撮影

 大阪市が4月、住吉区でハトやカラスへの餌やり行為を続けてきた人物に動物愛護法に基づいて餌やりの中止を命令する行政処分を出した。住民は長年、ふん害や騒音被害に悩まされており、市は命令に従わなければ刑事告発する方針。同様の問題は全国でも相次ぐが、命令は効果を上げられるだろうか。【鈴木拓也】

 同市住吉区のJR我孫子町駅近くの線路沿いには見上げるような高さのネットが延々と張られていた。区などによると付近では6~7年前から数人のグループが深夜から早朝にかけて路上などに餌をまき、数百羽のハトやカラスが集まった。

洗濯物干せない

 「カラスの鳴き声で睡眠が妨害される」「フンでベランダに洗濯物が干せない」。区への苦情は2019年度に154件に上った。市は19年12月、近隣住民らの陳情などを受け、条例を改正して、ハトなどに餌やりをした場合、ふん尿を清掃するように義務づけた。22年4月以降は、20年に改正された動物愛護法に基づいて餌やりをした行為者に繰り返し、止めるように指導・勧告をしてきた。

 こうした取り組みの結果、苦情は21年度が75件▽22年度が50件▽23年度が33件、と徐々に減っていった。

 ただ、餌やり行為が止まったわけではなく、市は4月に動物愛護法に基づき、餌やりの中止命令に踏み切った。野生のハトやカラスへの餌やりに対する命令は全国でも初めてとみられ、横山英幸市長は報道陣の取材に「再三にわたる注意や指導にもかかわらず、近隣住民から見ても明らかに度を越えた手法で続けていたので行政処分に踏み込んだ」と説明した。

刑事告発も視野

 命令の期間は25年4月30日までで、対象地域は、我孫子町駅付近の住吉区我孫子1丁目▽我孫子東1丁目▽長居東3丁目――など。従わなければ市は同法違反容疑で刑事告発する方針だ。違反した場合は50万円以下の罰金が科せられる可能性がある。

 住吉区によると、保健所職員らが定期的に餌やりをしていないか調査しているというが、命令後に対象地域内で餌やりがされたという形跡や情報はないという。このまま長年続いた「餌やり問題」は解決するのか。近隣住民の一人は「何とか収まってくれればいいが……」とつぶやいた。

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