災害廃棄物を搬出する全国災害ボランティア支援機構のメンバー。仮置き場への運び出しも担った=石川県珠洲市若山町で2024年4月13日正午ごろ(全国災害ボランティア支援機構提供)

 阪神大震災を経験した任意団体「全国災害ボランティア支援機構」のメンバーら男女14人を乗せたボランティアバス(ボラバス)が14日夜、能登半島地震被災地の石川県珠洲市から神戸市に帰還した。珠洲市災害ボランティアセンター(VC)のニーズに合わせ12、13両日、地震と津波で壊滅的被害を受けた宝立町(ほうりゅうまち)鵜飼(うかい)地区などで災害廃棄物の撤去などをした。

 最高齢で災害支援70回超の村上文敏さん(85)=明石市=は「圧倒的にボランティアが不足している」と感じたという。地域の象徴「キリコ祭り」の崩れた部材や民家の家財道具を運び出した。ただ、災害廃棄物の仮置き場まで自ら軽自動車で搬入するのは初めての経験だった。明石ダコを飾った愛用の帽子を被災した家主に手渡すと「孫の宝になる」と笑顔で喜んでくれたという。

地震と津波の被害を受けた珠洲市宝立町鵜飼地区。住民は2次避難などで離れ、無人の更地が広がっていた=石川県珠洲市宝立町で2024年4月12日午後5時ごろ(全国災害ボランティア支援機構提供)

 村上さんは東日本大震災後、県社協のボラバスで何度も宮城県へ通った。原点は、阪神大震災で神戸市長田区駒ケ林の実家が全壊し途方に暮れた時、家具を搬出したボランティアの温かさだ。「重い畳を運んだ時、アメ玉を渡してくれた5歳の少女とは高校生になった今も手紙をやりとりする」(気仙沼市大島)、「墓地が流され墓参りに行けないお年寄りのもとを避難所、仮設住宅などに毎年3月11日、お盆、年末と訪ね続けた」(名取市閖上(ゆりあげ))――。心の交流を重ねてきたからこそ、奥能登でも末永い活動を願う。

 一行は「兵庫県ボランティア」のワッペンを背に活動した。支援機構代表理事の高橋守雄さん(75)=神戸市西区=によると、珠洲市社協VCに最も喜ばれたのは、心のこもった義援金だったという。浄財は、阪神大震災で全壊した特別養護老人ホームの職員を地域型仮設住宅の運営スタッフにして、ボランティアらと苦楽を共にしてきた芦屋市の社会福祉法人「きらくえん」が10万円を寄託した。

「兵庫からの恩返し」にと地震と津波の被害を受けた珠洲市での災害ボランティア活動を終えた全国災害ボランティア支援機構のメンバー=石川県珠洲市宝立町で2024年4月13日午後(全国災害ボランティア支援機構提供)

 今回約90万円の活動資金を支出した高橋さんは「6月ごろ、仮設住宅の引っ越しや農作業のお手伝いのニーズがますます高まる」と再び現地入りを計画する。県が打ち出した「災害ボランティア活動応援プロジェクト・能登応援枠」(10人以上の宿泊、交通費に最大85万円助成)について「全国の災害ボランティアが注目している。次回は応援枠の適用を受けて、兵庫から『恩返しの心』を届けたい」と話した。【中尾卓英】

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