大津地裁、大津家裁、大津簡裁が入る庁舎=戸上文恵撮影

 滋賀県東近江市の湖東記念病院で入院患者を死亡させたとして殺人罪に問われた後、再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(44)が国と県に賠償を求めた訴訟の証人尋問が23日、大津地裁であった。取り調べを担当した滋賀県警の男性警察官が出廷。再審判決で西山さんの自白の任意性が否定されているが、供述を誘導したかを問われた警察官は「ありません」と述べた。

 西山さんは2003年に男性患者の人工呼吸器を外して殺害したとされ、懲役12年が確定して服役した。その後に再審開始が認められ、無罪とした20年の大津地裁判決は、軽度の知的障害がある西山さんへの取り調べを批判。警察官に迎合する態度や好意を利用して自白を引き出そうとしたと認めた。

 この日は西山さんの代理人が主に質問した。警察官は当時の西山さんについて「暴れたり、わめき散らかしたりする非常に手のかかる人物とされていた」と明かしたうえで、「発言を自発的に待った」と説明。事件への関与を認めるよう誘導したことはないとした。

 西山さんは取り調べで容疑を否認することもあり、これに伴う調書を作成したかを問われると、「ないと思う」。西山さんから向けられた好意の認識についても「ない」と答えた。「西山さんが殺害したと思いますか」との問いには「答えるつもりはない」と話した。

 西山さんも直接質問した。「何回も私に『俺がお前の不安を取り除いてやる』と言った。それはなぜ」と聞くと、警察官は「改心させるため」と答えた。

 この訴訟で西山さんは違法な捜査で苦痛を受けたとして約4300万円の賠償を求めている。警察官への証人尋問は西山さん側が請求して実現。今後、県警の捜査責任者や西山さん本人への尋問も実施される。【菊池真由】

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