日本初のノーベル賞受賞者で理論物理学者の湯川秀樹博士(1907~81年)が、亡くなるまで24年間を過ごした京都市左京区の旧宅が改修・改築され、京都大の迎賓施設「下鴨休影(きゅうえい)荘」となった。建築家の安藤忠雄さんが無償で設計を引き受け、博士が愛した庭や居間などは元の姿のまま修理する一方、半円形で吹き抜けのロビーを新設。「新旧がぶつかりあいながら世界のことや家族のことを考える空間」になった。
湯川博士の遺族から旧宅と土地を購入して京大に寄付し、改修改築費も負担した長谷工コーポレーション(東京)の辻範明会長や安藤さん、京大の湊長博総長らが出席して完工式が17日あった。
旧宅には遺族が長く暮らしていたが維持が難しくなり、京大に相談。湊総長が安藤さんに相談し、安藤さんと懇意の辻会長が協力を買って出て、保存活用が実現した。旧宅は1933年に建てられた木造で傷みが著しく、大部分をいったん解体し部材を代えて補強。内装材も木にこだわった安藤さんのプランを受け、安井杢工務店(京都府向日市)が施工した。
新築した半円形のロビーは木の傘を広げたような天井が特徴。蔵書が並んでいた部屋も組子のような天井の展示室に。残されていた資料蔵書も寄贈され、京大は、博士の大学時代の受講ノートや成績表、著名人らからの手紙などを展示する。
湊総長は「庭をめでて思索にふけり、国内外の識者と交流された博士が彷彿(ほうふつ)される。素晴らしい形で未来へつなぐことができた」。今秋から本格運用し、年に1、2回は公開もするという。【南陽子】
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