実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏をはじめとする著名人が、SNSの投資詐欺広告に肖像や名前を無断使用されている問題で、米IT大手メタ(旧フェイスブック)がフェイスブックやインスタグラムなどを通じて今年配信した投資広告のうち、半数以上がなりすましとみられることが14日、分かった。投資広告の配信元の約65%はアカウント名に日本語が含まれていなかった。日本語が用いられていても不自然なケースもみられ、海外から大量に配信されている可能性がある。
2万742個を分析すると…
警察庁の集計によると、SNSを使った投資詐欺の令和5年の認知件数は2271件。被害総額は約278億円に上った。犯人と最初に接触した際に使われたSNSは、男性はフェイスブックが22・1%、女性はインスタグラムが31・5%で最多だった。13日には、神戸市の58歳の女性がフェイスブックを通じ、堀江氏をかたる人物に5000万円超を詐取される被害が発覚した。
前沢氏によると、前沢氏になりすました詐欺広告による被害は188件、被害総額は約20億円に達するという。前沢氏と堀江氏は10日、自民党の消費者問題調査会などの合同勉強会に出席し、なりすまし広告の規制強化を求めた。
産経新聞がメタが提供するフェイスブックやインスタグラムなどのサービス上で今年配信された「投資」という言葉を含む広告2万742個を調査したところ、前沢氏ら著名人の名前が含まれたものが半数以上を占めていた。これらは同じ文章を流用して機械的に大量に作られていることから、詐欺広告の可能性が高いとみられる。
こうした広告に名前が登場した著名人では、経済アナリストの森永卓郎氏が3035個で最多。次いで、堀江氏、「2ちゃんねる」開設者の西村博之氏が多かった。投資というテーマに相性が良いと思われる芸人の中田敦彦氏、「青汁王子」として知られる実業家の三崎優太氏の名前も使用されていた。
「前澤 友亻乍」に「堀江贵文」も
投資広告の配信元を分析すると、約65%に当たる910個のアカウントには日本語が含まれていなかった。配信元のほとんどは使い捨てのアカウントとみられ、大半を占める英語の他に韓国語やベトナム語、タイ語のアカウントもあった。
日本語名のアカウントでは、堀江氏と森永氏に関連するものが18個で最も多く、村上氏が16個だった。日本語が含まれるアカウントにも、「前澤 友亻乍」といった横倍角の文字が使われたものや、「堀江贵文の投資ルール」のように一部が中国簡体字の不自然なものもあった。著名人だけでなく、企業もなりすましの被害に遭っており、SBI証券関連の31個を筆頭に、「産経新聞 1」という産経新聞の偽のアカウントも見つかった。
全体の約57%に当たる広告は登場する著名人の名前を除いてほぼ同じ内容で、「日本の文化庁は円の暴落、悪性のインフレを防ぐため増税を延期すべきと述べた」という趣旨の文言が書かれていた。しかし、文化庁は文脈に合っておらず、広告の出稿者は日本語を十分に理解していない可能性がある。
グーグルはAI活用し55億件を削除
フェイスブックの広告については、2016年の米大統領選でロシアが選挙介入のために使用したと指摘されている。メタは出稿された広告を公開することで透明性を確保する一方、明らかななりすましの広告が多く見つかっているのが現状だ。
前沢氏はメタに対して訴訟を起こすとしているが、個人での対応には限界があり、政府に対してITプラットフォームに対する広告規制の強化を求めている。欧州連合(EU)は、メタのターゲティング広告に対して厳しい規制を課している。
IT大手のグーグルは3月、2023年にAI(人工知能)も活用し、55億件の不適切な広告を削除したと発表した。メタも大規模言語モデル「Llama」を無料公開するなどAI技術で業界をリードする存在であり、同様の対応をとることは技術的に可能とみられる。
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調査はメタの広告ライブラリを使い、令和6年に日本で配信された「投資」という言葉を含む日本語の広告を対象に行った。日本語形態素解析システム「MeCab」を用いて広告から名詞を抽出し、それを基にフルネームで登場する著名人のランキングを作成した。広告は同じ内容のものを時期や配信先の年齢や地域を分けて出したり、クリックされやすいように画像や動画を微調整したりしたものを個別に数えている。広告の数は表示回数の多さと必ずしも一致しない。数字は4月11日正午時点。
SNS関連の投資詐欺- 前沢氏メタを提訴へ 投資の詐欺広告放置
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