富山県朝日町にある国の指定史跡「不動堂遺跡」のエリア内で、町教委が文化財保護法で定められた現状変更許可を県教委から得ないまま樹木の伐採や剪定(せんてい)をしていたことが17日、毎日新聞の取材で判明した。史跡内の樹木の伐採などの現状変更許可は文化庁から都道府県教委に権限委譲されているが、町教委から県教委に事前に相談はなかった。県教委は同日までに町教委に対して、今後同様の伐採をする際は相談するよう指導した。
現場は、縄文時代の巨大な竪穴住居が見つかった不動堂遺跡。復元されたカヤぶきの竪穴住居の横に立つトチやハンノキなどの樹木は幹の上部がバッサリ伐採され、春になって新芽が出ている。
遺跡は1974年に国の史跡に指定され、町教委が管理しているが、草刈りなどの一般的な維持管理は、2023年4月から一般財団法人朝日町文化・体育振興公社が町から委託され行っている。町教委と公社によると、公社から町教委に「樹木を剪定したい」という相談があり、町教委が了承。公社から発注を受けた地元の土木業者が23年春、史跡エリア内の樹木計21本の幹や枝を大胆に切り落とす「強剪定(きょうせんてい)」をした。町教委によると、強剪定の費用は施設の維持管理のために公社が持つ既存の予算から支出したという。
公社は当初、取材に対し、剪定時期について、町から維持管理業務の委託を受ける前の「23年3月」と回答。その後、同町教委の前事務局長(16年4月~22年3月)で22年6月から公社理事長を務める小杉嘉博氏が「4月3日の間違いだった」と訂正した。
町教委の水野真也事務局長は取材に「樹木から落ちる雨水の滴が隣の竪穴住居のカヤを腐らせるため必要な剪定だった。通常の維持管理の範囲で、県教委に許可を得る必要はないと判断した」と説明した。
しかし、毎日新聞から指摘を受けて現地を確認した県教委生涯学習・文化財室は「枝の剪定については史跡の管理上行われたと聞き、許可不要とも思われるが、それを判断するのは県」とし、「今回の樹木の伐採は文化財保護法に基づく現状変更の許可が必要な行為であり、事前に県に相談があればよかった」とコメントした。今後は、他の市町村に対しても周知徹底を図り、文化財保護に努めるという。
県教委の指導を受けて水野局長は「県の指示に従いながら史跡の適正な管理に努めていきたい」とコメントした。【萱原健一】
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