写真はイメージ=ゲッティ

 勤務先のスーパーで約100万円を盗みホストクラブにつぎ込んだ40代の女性。甲府地裁は13日、窃盗などの罪に問われたこの女性に対し、懲役2年4月(求刑・懲役3年)の判決を言い渡した。公判で女性は「精神的に追いつめられ、(ホストを)逃げ場にしてしまった」と吐露した。【野田樹】

 判決などによると、女性は、山梨県韮崎市の無職、西岡千代被告(48)。2023年9月、約10年働いた同県中央市のスーパーで、レジから2回にわたって現金計139万6186円を持ち出した。

 西岡被告はSNS(ネット交流サービス)で大阪の新人ホストと知り合い、8月下旬からホストクラブに通い始めたという。しばらくは1回10万円未満にとどまっていた料金は9月19日、208万円に跳ね上がる。前日に勤務先のレジから102万4000円を盗んでおり、逮捕後の調べで「ホストの誕生日で、最低100万円は必要だと思った」と動機を話したという。

 全額は払えなかったため、約100万円が「売掛金(ツケ)」となり、親族が工面。その支払いに行った際、西岡被告はさらに約60万円の飲食をしている。

 「自分でいられる時間がホストと一緒にいる時だけだった」。裁判でホストに金を使った理由を尋ねられ、西岡被告はそう振り返った。職場では「いいように使われている」と感じてストレスをため、家庭では夫に怒鳴られ、人として扱ってもらえないつらさを抱えていたことなども供述。「金銭感覚がおかしくなっていた」と消え入る声で話した。夫とは24年1月に離婚した。

 西岡被告は、ホストクラブ通いを始める前の23年4月、クレジットカードの支払いや車のローン返済に困り、管理していた自治会費に手をつけていた。当時住んでいた県営団地の会計役員の立場を悪用。同月から9月にかけて計141万4000円を着服し、業務上横領の罪にも問われた。

 三上潤裁判官は判決で「動機に酌量すべき事情は認められない」と非難。判決文を読み上げた後、「気持ちを入れ替えて、人のお金に手を付けることは絶対しないという強い気持ちを持ってほしい」と諭した。

 西岡被告は小柄な背中を丸め、うつむき加減で法廷を後にした。被害額計約280万円については24年1月、分割して返済する意向を示したが、支払いの見通しは立っていないという。

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