21億円の横領事件をめぐり、無罪が確定した不動産会社の元社長が国を訴えた裁判。

捜査を担当した大阪地検特捜部内の、生々しいやり取りが明らかになってきました。

■陳述書には生々しいやり取りが

【山岸さんの弁護団 秋田真志弁護士】「(大阪地検特捜部は)決めつけだけで突き進んでいるのと、山岸さんの関与を認める供述をとにかく取りたい、その一心だったんだなと」

14日の会見で、改めて大阪地検特捜部の捜査を批判したのは、「プレサンスコーポレーション」元社長・山岸忍さんの弁護団です。

事件は5年前、学校法人の土地取引をめぐり、山岸さんが部下らと共謀し21億円を横領したとして、大阪地検特捜部に逮捕・起訴され裁判で無罪が確定しました。

その後、山岸さんは国に損害賠償を求める裁判を起こし、6月11日からは捜査を担当した、当時の検察官らの尋問が行われることになっています。

その尋問に先立って、検察官らが話している内容が記された陳述書が公開され、事件当時、特捜部内で行われていた、生々しいやり取りが明らかになりました。

その中でも驚きだったのは、検察官Sがした上司への進言。

【検察官S】「山岸さんの逮捕は、いったん待った方がいいと思います」

なぜすでに逮捕状の請求も行われている状況で、このような進言をしたのか。

その理由は、事件の関係者Yさんが話した「山岸さんが横領に関与していた」という証言を、撤回してほしいと申し出たからでした。

そもそもこの事件は、山岸さんの関与を示す客観的な証拠がとぼしく、特捜部は検察官Sが取り調べたYさんらの証言に有罪立証の根拠を求めていました。

この当時の取り調べについて、Yさんが関西テレビの取材に応じました。

【Yさん】「高圧的でもあり、言葉たくみでもあり、自分が何を言ったらいいのか分からない状態。(事件関係者)の立場の中で言ったら、そんなに悪い、上の方じゃないと検察官に言われて、そういうふうに(山岸さんが関与していると)しゃべりなさいと言われてしまったから、楽になるかなと思って、しゃべってしまった」

後日、この証言を撤回しますが…
【Yさん】「(供述調書が)変わってないと話を何度もしたけど、そんなに変えてほしいんやったら、法廷でひっくりかえしたら、よろしいと言われた」

14日、明らかになった陳述書には、検察官Sと上司の当時のやり取りも記されていました。

【検察官S】「『訂正調書』を作ってほしいと、Yが言っています」

【検察官Sの上司】「撤回前の方が信用できる。作成する必要はない」

結局、訂正調書が作られることも、山岸さんの逮捕が見送られることもありませんでした。


【山岸さんの弁護団 中村和洋弁護士】「いわばこれは証拠の隠ぺいになると思うんですが、それが主任検事(Sの上司)によって行われていたことが、陳述書で明らかになった。

【山岸さんの弁護団 秋田真志弁護士】「(検察は)引き返せるところがいっぱいあったのに、全然引き返そうとしなかった」

6月11日から始まる検察官らの尋問。法廷で何が語られるのか注目が集まっています。

■威圧的な取り調べも 「供述頼みではなく、客観的証拠による操作を」

大阪地検特捜部による生々しいやりとりが明らかになりましたが、ほかにも問題があります。

検察による威圧的な取り調べがあったということです。
プレサンス元社長冤罪事件をめぐり、検察官Tが机をたたく、大声で怒鳴るなどの取り調べを行いました。

陳述書で検察官Tは、「言葉だけでは真剣に向き合ってもらえないと思ったときには、机をたたいたこともあった」と説明しています。

14日の会見で秋田真志弁護士は「検察官Tは、山岸さんの関与を示す供述を取らなければならないと、焦っていた」のではないかと話します。

検察の見立てに合うように、供述を引き出そうとしていたのではないか、というふうに見て取れます。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「批判されてきていますが、検察というのは、最初に立てた筋書き、見立てに合う供述を取って一人前というところがあったと思います。今回の件で言うと、強引さがあったということと、主任検事は途中で部下から進言されても、方針を変えなかった。本当は引き返す勇気というか、後戻りする勇気があれば止められたと思います。しかし結局は、そのまま見立て筋書き通り行ってしまったというところが一つのポイントです。机を叩いたり、大声で怒鳴ったりして、取り調べたとしても、実はいま、特捜部案件は全部、録音録画されています。後で見返せば、違法的な取調べがあったということは、証拠として残っているので、供述頼みではなくて、客観的な証拠を固めていった上で、供述に頼らない捜査がいまの検察に求められていると思います」

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月14日放送)

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