日本のミュージカルの聖地、東京・日比谷の帝国劇場が建て替えられるのを前に、障害を持つ演劇ファンらが10日、バリアフリーに根ざした劇場として再生されることを求める2万1000人超の署名を運営会社の東宝に提出した。
署名を集めたのは、障害の当事者らで作る「We Need Accessible Theatre!(ウィー・ニード・アクセシブル・シアター)」。自身も聴覚障害があり、障害者の観劇サポート活動をしている広川麻子さんら29人が呼び掛け人となって結成した。
俳優の経験もある広川さんは、研究のため多くの舞台を観賞してきた。海外では手話通訳や字幕投影、視覚障害者のための音声ガイドなどのサービスが多くの劇場で充実しているが、国内では支援が十分ではなく、劇場や主催者側にその都度台本を貸してもらわなければならない状況が度々あったという。
「障害の有無を問わず誰もが楽しめる劇場を作ってほしい」と昨年10月にオンライン署名を始めた。署名と同時に「車いす席の位置に工夫を」「音声ガイドなどの対応をしてほしい」といった切実な声が寄せられた。
帝国劇場は1911年に日本初の本格的な西洋式大劇場として誕生。40年に東宝の直営となった。現劇場は66年開場の2代目。障害を持つ観客へのサポートとして紙の台本やタブレット端末の貸し出し、車いす用スペースの確保などを行っている。劇場と出光美術館が入る帝劇ビル、隣接する国際ビルは、老朽化に伴って周囲を一体的に建て替える計画を打ち出しており、帝劇は2025年に一時休館する予定。
ウィー・ニード・アクセシブル・シアターのメンバーは署名提出後に記者会見し、観劇を楽しむためには建物のバリアフリー、情報保障の充実、障害への理解が必要と指摘。「署名を受け取っていただいたということは、私たちの意見を前向きに考えてくださると期待している。日本の舞台芸術をけん引してきた歴史ある帝劇が障害者の声を聞くプロセスを踏むことで、ほかの劇場のモデルになるのではないか」と話した。今後は国にも支援を要望していくという。【山崎明子】
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