◆闘病をきっかけに起業。信金サポートなど、受けた支援はさまざま
抗がん剤治療などによるヘアロスに悩む女性に向けたケア帽子などの開発・販売について話す「MAYK」の原まゆみさん=東京都世田谷区で
「がん闘病中の女性を幸せにしたい。その思いが起業の原動力になった」。抗がん剤治療の副作用で髪が抜けた女性に向け、ウィッグ付きのケア帽子を開発・販売する「MAYK(メイク)」(世田谷区)代表の原まゆみさん(48)は振り返る。 起業のきっかけは、子宮頸がんを患って髪が抜ける経験をしたこと。「自分と同じように悩む女性がいるのではないか。おしゃれで被り心地の良い帽子をつくりたい」。2021年9月から半年ほど入退院を繰り返す中、闘病生活と並行して事業計画を練り、22年3月に日本政策金融公庫からの融資を元手に起業した。 起業後は、昭和信用金庫が創業間もない事業者にオフィスを貸し出す「インキュベーション施設」を利用する。原さんは、信金の職員から自治体の補助金や決算書の作り方について教わったといい「サポートしてくれて心のよりどころになっている」と感謝する。◆中小企業診断士が営業戦略をアドバイス
国が全国に設置する経営相談所の「東京都よろず支援拠点」でも、創業間もない事業者から販路開拓に関する相談や、会社員から「副業で起業したい」との問い合わせが寄せられる。相談に対応するのは約20人の中小企業診断士らで、各自治体の創業支援策を案内したり、営業戦略のアドバイスをしたりする。東京都よろず支援拠点の相談スペース=港区で
同拠点を運営する都信用金庫協会の担当者は「創業者が融資を受ける際に口座開設が必要な例も多い。地元の信組や信組につなぐなど、創業者の事業とお金の両方を支援したい」と話す。都が女性・若者・シニアの創業を支援しようと、信金や信組を通じて低金利・無担保で融資する制度の活用も呼び掛ける。◆投資ファンドの助言を受けられる催しも
東京商工会議所が開いた発表会。起業希望者らがアイデアを披露する=千代田区で(東京商工会議所提供)
経済団体では、東京商工会議所が22年12月から年1回、起業家らがアイデアを披露する「東商アイディアピッチ」を開催。特徴は投資ファンドや金融機関の担当者が聴講し、起業家らはその場で資金調達の助言を受けられる点で、東商の阿知良拓さん(41)は「地域の課題を解決できるアイデアを募集する」と説明する。その上で「東京は支援機関やインキュベーション施設が多い。創業しやすい環境があり、ピッチを起業の入り口にしたい」と語った。 金融機関の融資にも変化の兆しがある。銀行業界では、企業の財務内容を基に融資する従来の手法と異なり、事業の将来性を重視する「ベンチャーデット」という考え方が広がりつつある。全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は1日の定例会見で「スタートアップにおける資金調達手段の一つとして銀行融資への期待が高まっている」「事業そのものを評価して融資する姿勢が求められている」と述べ、起業家を支える取り組みを強化する考えを示した。◆コロナ後の創業融資は増加傾向
日本政策金融公庫(日本公庫)が都内の創業予定者に実施した融資は、22年度が2389事業者で、コロナ禍となる20年度の1.3倍超に増えた。担当者は、コロナ禍で雇用環境が一時的に不安定になった点を挙げ「起業が働き方の選択肢の一つになった」とみる。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。