日本国際博覧会協会の石毛博行事務局長=1日午後、大阪市住之江区(須谷友郁撮影)

2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が平成31年1月に発足し、ゼロの状態から、ようやく万博開幕1年前を迎えるまでになった。これからさまざまな課題が具体化し、山登りに例えると急峻(きゅうしゅん)なコースに入る。万博には厳しい指摘もあるが、多くの人の期待に応え、記憶に残るすばらしい万博にしたい。

万博の象徴となる大屋根(リング)は、新型コロナウイルス禍の令和2年夏、建築家の藤本壮介氏が構想した。分断の時代に多様であることの重要性を発信するため、世界を一つにつなぐ万博にする思いを込めている。

リングの中に納まる海外パビリオンは、各国の社会や歴史、文化、技術をショーケースとして示す。期待を超える展示が行われるだろう。万博はモノを示すだけでなく、人の交流も重要だ。魅力的な催事が会場に集まる人たちの心をつなげる。

会場工事の進捗だが、各界のトップランナー8人がプロデューサーとして手がけるパビリオンや、13企業・団体の民間パビリオンなど日本国内の関係施設は順調に工事が進んでいる。

海外パビリオンについては、参加国が自前で建設するタイプAを50数カ国が希望している。今月4日現在で36カ国が建設業者を決め、順次着工している。リング内の道路舗装などを始める今年10月には重機が入りにくくなることを念頭に、準備を進めてもらう。

準備が遅れている国に対しては、政府と万博協会がマンツーマンで相談に乗るなどしている。多くの心配をかけたが、現在はかなり状況が変わってきており、博覧会国際事務局(BIE)のケルケンツェス事務局長は、過去の万博と比べてもスケジュールに問題はないとの認識を示している。

万博は開催期間中に計約2820万人の来場を想定している。チケットは100万枚以上売れており、集中的なプロモーション期間などで販売を強化していく。万博の具体的なコンテンツが明らかになることで、企業だけでなく一般の人の購入も進むとみている。

機運醸成については、大阪・関西以外の地域では十分進んでいるとはいえない。特に東京でアピールを強化することが課題であり、万博開催が大阪・関西だけでなく、各地のメリットになることを訴えていきたい。

世界はロシアによるウクライナへの侵攻やガザの紛争などで、分断と対立の危機にある。こうした中で「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの万博を開催することは非常に意義深い。万博が世界の未来社会を考える場となることを願っている。(聞き手 井上浩平)

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