百貨店を中心に「ニューヨーカー」や「ブルックスブラザーズ」などの有名ブランドを扱う老舗アパレル企業が、大株主のアクティビスト(物言う株主)から経営陣の刷新を求められている。長引く経営不振が理由だ。旧来型アパレルは、安価なファストファッションに押され、コロナ禍でも大打撃を受けた。各社は立て直しを図るが、業績の明暗が分かれている。(岸本拓也)  経営陣の刷新を求められているのは、老舗アパレル「ダイドーリミテッド」(東京)。求めたのは、今年3月末時点でダイドー株を議決権ベースで32.2%持つ投資ファンド「ストラテジックキャピタル」だ。

ダイドーリミテッドが展開するブランド「ブルックスブラザーズ」の店舗=東京都港区で

 ストラテジック側が問題視するのは、オンワードホールディングスやユナイテッドアローズ、三陽商会などの同業他社がコロナ後に本業の衣料事業の業績を回復させている中、ダイドーは苦境から脱する兆候が見られないことだ。

◆「時代の変化についていけていない」

 ダイドーの衣料事業はここ10年、ほぼ赤字の状態が続いており、ストラテジック側は「現体制では株主価値の向上は実現不可能」と強調。6月に開催予定の定時株主総会で、鍋割宰(つかさ)社長らダイドーの現経営陣の退陣と、独自の取締役候補6人の選任を求める株主提案をすることを決めた。  4月17日に記者会見したストラテジックの丸木強代表は「ニューヨーカーもブルックスブラザーズも歴史あるブランドだが、時代の変化についていけていないのではないか。プロに立て直してもらいたい」と語気を強めた。  独自の取締役候補には、アパレル大手のオンワード樫山で社長・会長を歴任した大沢道雄氏や、ブルックスブラザーズの日本法人で最高財務責任者(CFO)を務めた中山俊彦氏らが名を連ねた。

◆株主提案に「社内でしっかり審議」

 会見に同席した大沢氏は「百貨店が客を集めて、そこに商品展開する時代は終わった。これからのアパレルはEC(電子商取引)比率を上げて直接消費者にアクセスしないといけない。そういう変革しているところは業績回復しているが、ダイドーはEC比率をどうするかしっかりコミットしていない」と指摘した。  また、ストラテジック側は、ダイドーが従業員の人員削減を進める一方、業績低迷でも経営陣と監査役だけが恩恵を受ける仕組みのストックオプション(自社株購入権)を継続していることも問題だとした。  株主提案について、ダイドーの経営管理室の担当者は「内容を社内でしっかり審議している」と話した。

ユニクロに代表されるファストファッションが台頭。旧来型のアパレルは低迷した(資料写真)

 百貨店を主力販路としてきた旧来型のアパレルは、百貨店の不振や、ユニクロをはじめとする安価なファストファッションの台頭で低迷。コロナ禍が追い打ちとなり、2020年5月に「レナウン」が破綻するなど、苦境が続いていた。

◆行動制限解除、業績を復活できたのは…

 昨年からコロナ禍による行動制限が解除され、帝国データバンクの23年11月調査では、アパレル業全体の景況感はコロナ禍前の水準を上回った。  ただ、帝国データの武原護氏は「勢いがあるのは消費者の節約志向を反映したファストファッション市場と、自分の服装にこだわりたいという人のニーズを満たす高級ブランド市場。この二つが成長している半面、百貨店アパレルを中心とした中間層は依然として厳しい現状だ」と指摘する。  今後については、「季節ごとに大量の商品を投入し、売れ残りをセールで処分するという長年の商習慣を見直す動きも出ている。独自性のある商品やサービスを打ち出して消費者からの支持を得ることがカギとなるのではないか」とみている。 

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