日銀は2日、マイナス金利政策の解除を決めた3月18、19日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。17年ぶりの利上げ決定に際し、多くの審議委員が賃上げの動きを背景に「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況になった」と評価していたことが明らかになった。  雇用の7割を占める中小企業の賃上げについても、複数の委員の間で楽観的な議論が広がった一方、委員の1人が中小の賃上げ余力の高まりについて「連合の集計結果だけでは十分に確認できない」と慎重な見解を示していたことが分かった。

金融政策決定会合の議事要旨を公表した日銀

 3月会合には植田和男総裁のほか副総裁2人、審議委員6人の計9人が出席。当座預金の一部に年0.1%の手数料を課すマイナス金利政策をやめ、政策金利にあたる「無担保コールレート翌日物」を0~0.1%程度とすることを賛成多数で決めた。  長期金利を低く抑える長短金利操作の撤廃や上場投資信託(ETF)の新規購入の終了も決めており、金融政策正常化を始める歴史的な転換点と位置付けられている。  議事要旨によると、中小の賃上げの動きについて「中小企業を含め、幅広い企業で賃上げの動きが続いている」と見方を大方の委員で共有した。中小の賃上げ率は大企業の動向を見極めて決定するといった意見や、大企業の高水準の賃上げを受けて人材確保の観点から中小企業でも賃上げが期待されるといった声が相次いだ。  一方で、委員の1人は「人件費上昇の価格転嫁の状況などを確認する必要がある」とくぎを刺す場面もあった。  採決時には、中村豊明委員が大企業に関係するETFの新規購入終了には賛成しつつも、マイナス金利政策は業績回復が遅れている中小企業の賃上げ余力が高まることを確認するまで継続するべきだとして反対していた。
(山田晃史)

金融政策決定会合 日銀総裁、2人の副総裁、6人の審議委員の計9人が多数決で金融政策を決める会議。年8回の定例会合は2日間の日程で開かれる。景気が急激に悪化する懸念がある場合などに臨時で開くこともある。終了後に決定内容を公表し、総裁が記者会見で説明する。政策運営の透明性を保つため、出席者の主な意見や議事要旨は後日公表している。



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